闇の中の(前) (ギルマノ/
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―――― これが屈辱と言わずして、何を屈辱と言うのか・・・・。ジュリアは唇を噛み締めた。
D6の開発エンジニアが一堂に会して行われる報告会、生憎、今日は主幹のブラウンが欠席だった。急用が入ったのだと聞いたが、仔細はわからない。しかし、ブラウンが居ない、それだけでジュリアの気持ちは地ほどにも落ちるのだった。
別に彼に恋焦がれているとか、そんなくだらない理由ではない。ブラウンは女だからというつまらない理由で彼女を見下さない稀有の人間だったからだ。
成果を出しさえすれば、その研究者がたとえ獣だったとしても彼は対等に接するだろう。言いかえれば成果を出さない者はその存在さえ無視される ――― 徹底した成果主義を貫く男 ――― それがブラウンだった。
だからだろう、彼には人間味を帯びたエピソードなど何一つ無い。それどころか彼に関わって以来、姿を一切見かけなくなった研究者が居ることは周知の事実だ。彼らの運命は―――考えたところで、黒い幽霊団(ここ)では意味をなさない。
ブラウンはすべての研究者から恐れられていた。
それでもジュリアはブラウンを慕っていた。彼にとっての自分は都合のいい道具でしかないことは百も承知、それでも研究者として受け入れてもらえる、それで充分だった。ブラウン以外の男どもは自分を研究者としては受け入れてはくれないのだから。
だからブラウン不在の報告会はジュリアにとって針のむしろ以外の何物でもなかった。
「お願いします。私の報告をさせてくださいませんか!」
みたびジュリアは進行役のガイアを睨んだ。サングラスの奥は窺うことができないが、明らかな侮蔑は空気から察せられた。
「そう、声を荒げることはないでしょう、ただ私はベッドの上で聞こうと言ってるのですよ」
ガイアの返しに会議室は卑下た笑いが広がる。「独り占めはずるいぞ」「俺も混ぜてもらいたいもんだ」そんな声も聞こえる。ジュリアは顔が赤らむのを抑えれらない。
ガイアはその反応に口元をいやらしく歪め、威圧的に言葉を続けた。
「特別な話なんだから、特別な場所で聞いてやろうと言っているのだよ、マノーダ君」
女というだけで同等に見られないばかりか、こんな嫌がらせを堂々と受ける ――――― 公式な場所であっても、だ。ブラウンさえ居てくれれば、表面上だけでも嫌がらせは抑制されるのに・・・。
ところが彼不在の場では、ブラウンへの反感とともにジュリアに対する嫉妬が一気に噴出する。ブラウンお気に入りのジュリアが標的となるのは必然だった。
「今晩23時にでも私の部屋に来ていただければ、君が満足できるほどに話を聞いてあげられますよ。もっとも、話しをする余裕があれば、ですがね」
顔の半分を覆った髪の隙間から見る男達。その目がいやらしく自分を見ているように思え、目の奥がじわりと熱くなる。しかしここで泣くことは、彼女のプライドが許さなかった。
「ここで報告させていただけないのであれば、失礼しますっ!」
殊更大きな音を立てて閉めた扉の向こうで嗤いがはじけた。
悔しい、悔しい ――― もう、流れ出る涙を抑えることはできなかった。 階段を一気に駆け上がり、自分の研究室に飛び込むと、ジュリアは声をあげて泣いた。
ギル誕SS。一気に書けないので連載で。
兼ねてより温めていたギルマノを平ゼロ設定にしてみました<なんでもアリだな
D6開発時期。極北の幽霊に出てきた、ジュリア・マノーダ博士を無理やり引っ張り出してます。
兼ねてより温めていたギルマノを平ゼロ設定にしてみました<なんでもアリだな
D6開発時期。極北の幽霊に出てきた、ジュリア・マノーダ博士を無理やり引っ張り出してます。
―――― これが屈辱と言わずして、何を屈辱と言うのか・・・・。ジュリアは唇を噛み締めた。
D6の開発エンジニアが一堂に会して行われる報告会、生憎、今日は主幹のブラウンが欠席だった。急用が入ったのだと聞いたが、仔細はわからない。しかし、ブラウンが居ない、それだけでジュリアの気持ちは地ほどにも落ちるのだった。
別に彼に恋焦がれているとか、そんなくだらない理由ではない。ブラウンは女だからというつまらない理由で彼女を見下さない稀有の人間だったからだ。
成果を出しさえすれば、その研究者がたとえ獣だったとしても彼は対等に接するだろう。言いかえれば成果を出さない者はその存在さえ無視される ――― 徹底した成果主義を貫く男 ――― それがブラウンだった。
だからだろう、彼には人間味を帯びたエピソードなど何一つ無い。それどころか彼に関わって以来、姿を一切見かけなくなった研究者が居ることは周知の事実だ。彼らの運命は―――考えたところで、黒い幽霊団(ここ)では意味をなさない。
ブラウンはすべての研究者から恐れられていた。
それでもジュリアはブラウンを慕っていた。彼にとっての自分は都合のいい道具でしかないことは百も承知、それでも研究者として受け入れてもらえる、それで充分だった。ブラウン以外の男どもは自分を研究者としては受け入れてはくれないのだから。
だからブラウン不在の報告会はジュリアにとって針のむしろ以外の何物でもなかった。
「お願いします。私の報告をさせてくださいませんか!」
みたびジュリアは進行役のガイアを睨んだ。サングラスの奥は窺うことができないが、明らかな侮蔑は空気から察せられた。
「そう、声を荒げることはないでしょう、ただ私はベッドの上で聞こうと言ってるのですよ」
ガイアの返しに会議室は卑下た笑いが広がる。「独り占めはずるいぞ」「俺も混ぜてもらいたいもんだ」そんな声も聞こえる。ジュリアは顔が赤らむのを抑えれらない。
ガイアはその反応に口元をいやらしく歪め、威圧的に言葉を続けた。
「特別な話なんだから、特別な場所で聞いてやろうと言っているのだよ、マノーダ君」
女というだけで同等に見られないばかりか、こんな嫌がらせを堂々と受ける ――――― 公式な場所であっても、だ。ブラウンさえ居てくれれば、表面上だけでも嫌がらせは抑制されるのに・・・。
ところが彼不在の場では、ブラウンへの反感とともにジュリアに対する嫉妬が一気に噴出する。ブラウンお気に入りのジュリアが標的となるのは必然だった。
「今晩23時にでも私の部屋に来ていただければ、君が満足できるほどに話を聞いてあげられますよ。もっとも、話しをする余裕があれば、ですがね」
顔の半分を覆った髪の隙間から見る男達。その目がいやらしく自分を見ているように思え、目の奥がじわりと熱くなる。しかしここで泣くことは、彼女のプライドが許さなかった。
「ここで報告させていただけないのであれば、失礼しますっ!」
殊更大きな音を立てて閉めた扉の向こうで嗤いがはじけた。
悔しい、悔しい ――― もう、流れ出る涙を抑えることはできなかった。 階段を一気に駆け上がり、自分の研究室に飛び込むと、ジュリアは声をあげて泣いた。
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