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ビリオネア 7/8  (お笑いComments(0) )

     





あっけなく30秒は終わってしまった。
彼は正解を教えてもらうどころか、彼らに問題を伝えることさえ出来なかった。

「あっちゃ~。日本語読めませんでしたか?」
「っつーか、この漢字は・・・読めないっスよ」
そうかもしれない。
ジェット不運である・・・。とりあえず今はは、彼の名誉のためそういうことにしておこう。

「さて、どうします?」

おもむろに美濃は3枚の小切手を持ち出した。

ジェットさんがこれに正解をすれば、750万円を手にします。
不正解なら、100万円。
ドロップアウトなら500万円が確実にあなたのものになります。

普段はとても聞きなれない金額にジェットは生唾をゴクリと飲み込んだ。

フランソワーズが顔をしかめてしまうようなビデオが一体何本買えるのだろう?
今日のゲスト-今はまだゲストルームに居るけれど-グラビアアイドルのあの娘の写真集が何冊買えるんだろう?
計算をしようとするが、途方も無い数だということしかわからない。
イワンがよく、「テンモンガクテキスウジ」と口にするが、きっと、こういうことなのかもしれない。


じっと問題のモニターを凝視していたジェットは、息をするのを忘れていたことに気付き、「ふぅ」と溜息のような呼吸をした。

「時間はたくさんありますよ。じっくり考えていただいていいですからね」


「やっぱり・・・」


「ドロップアウト」の一言が出かかったとき、脳に彼の声が響いた。

<<パシリか?>>
アルベルトからの通信である。返事の無いジェットに構うことなく、彼は続けた。
<<ここでドロップアウトなら500万円は手に入るが、そうなれば、オレのパシリ決定だな。>>

(アルベルトの1日パシリ!!(怒))

パシリだなんて屈辱的すぎる。
加速装置は009の専売特許ではないが、パシリは009の専売特許なのだ。
まして、三十路のオヤジにこき使われるだなんて、願い下げだ。

<<冗談じゃねー!>>
<<フフフ、その意気だ。じゃ、せいぜい がんばるんだな。>>

最後の通信は嘲笑すらこもっていた。
(いいか、オッサン、必ずギャフンといわせてやる。)

正解は2つに1つ。
とにかく、考えろ、考えろ、考えろ。
ジェットは腕組みをし、目を閉じた。

 #イワンが答えはDでないと言った。
 #残ったのはA、B、C
 #A・B・C・・・・
 #A・B・C・・・・
 #A・B・C?
 #!

このとき、ジェットはあることに気付いた。


 #そうか、そうだったんだ!


 #AといえばALBERT
 #そしてBはBRITAIN
 #Cはもちろん、CHANG CHANGKU
 #そうだ!不正解のD以外は00ナンバーオヤジ3人組のイニシャルだ。
 #ということは・・・、これは今後、誰に付いていくべきかを暗示した問題なのかもしれない。
 #アルベルトのA
 #ブリテンのB
 #張々湖はあんなハッピを作ってるようじゃ、付いていく価値はない。
 #だからこそ、フィフティーフィフティーでCが真っ先に消されたんだ。

 #AかB
 #アルベルトとブリテン
 #オッサンとハゲオヤジ・・・
 #悩む・・・・・
 
額から汗がタラタラと流れ落ちる。
美濃もジェットの凄まじい形相に声をかけることが出来ない。
息を呑む会場。
テレビモニターで様子を見守る4人の仲間も食い入るように画面を見つめる。



 #やはり・・・


彼は、きっと顔をあげ、美濃を見つめた。


 #ブリテンだ。


長い髪に隠れた瞳がキラリと光った。


彼が決断したことを感じた美濃は、長い沈黙を破った。
「どうします。 続けますか?」
「ハイ。ドロップアウトはしません」

会場から割れんばかりの拍手が彼に送られた。

「Bで」
「Bの・・・」
「読めません!」
「あっ、あぁ。そうでしたっけね。Bは桓武天皇ですよ」
「じゃあ、Bのカンムテンノーで」
「どうしてBを」
「付いていくことにしたから」
「はっ?」
「だから、これからは付いていくことにしたんだよっ!」

さすがの美濃も、これには返す言葉を失った。
あまりにも長い時間考えすぎたせいで、ジェットが壊れはじめたのだと思った。
美濃はとっさにそう判断すると、進行を急いだ。

「では、ジェットさん答えをどうぞ」
「Bの・・・カンムテンノーで」
「ファイナルアンサー?」
「FINAL ANSWER!」

モニター画面のBの答えがオレンジ色に変わる。
「では、500万円にはもう、戻れません」
美濃は厳かに500万円の小切手を破った。


緊張感を伴った低い音楽が響き渡る。
その音は腹の底からじわじわと身体を揺さぶり、否が応でも身体に力が入る。


美濃がジェットを見つめる。
口をへの字にぎゅっと結び、目を大きく見開き、まるで彼を透視するかのように凝視する。

ジェットは言葉も無く、握った拳にぐっと力をこめた。

汗に滲んだ美濃の浅黒い顔がライトに照らされ、ギラギラした瞳を一層際立せた。
こんなオヤジと見詰め合うなんて真っ平ゴメンなのに、瞳から目をそらすことが出来ない。
見詰め合うことに耐え切れなくなったジェットが、笑う。しかし、その笑顔は青白く、引きつっている。

「どう・・なんだ?」

その瞬間、美濃の表情が悲しげなものに変わる。
今にも審判を下そうとしている彼の口が、小刻みに揺れる。
美濃の手が彼の機械仕掛けの心臓をわしづかみにし、ギリギリと締め上げているような錯覚に囚われた。

「ま、間違ってるのか?」


それでも美濃は表情を崩さず、口だけがわなわなと動く。

「は・・・はやく言ってくれよ」

もはや自分が笑っているのか、怒っているか、泣いているのかさえわからない。


会場の注目。
美濃の視線。
響く音楽。
次の瞬間は栄光か、挫折か。
この場から走って逃げたしたい衝動に駆られる。
しかし、実際は足がすくんでそれさえ出来ないのである。


その刹那、美濃が口元を緩め、笑ったような顔になった。



「ざんっねーーーーーーん」




あぁ・・・というどよめきが会場から起こった。
ジェットも両手を顔に押し当てて、空を仰いだ。
テレフォンの4人も、「あぁ~~あ」と溜息をもらした。
この収録に立ち会っている者すべてが、彼の判断を惜しんでいる中、アルベルトの口元だけが僅かに緩んだ。


「それでも、大健闘でした。ジェットリンクさんに盛大な拍手を!!」


彼は100万円をゲットし、スタジオを後にした。


<Prev.  Next>




*****

ここに出てくる美濃さん、ミリ○ネアよりマジ○ネアのほうに近いかも・・・(汗)

(03年6月11日 NBG様へ投稿)
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