微睡み(本編)fromまっくさま (いただきもの/
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『 微 睡 み 』
――冬にしてはポカポカと春めいて暖かいある日、フランソワーズはいつものようにパタパタと家中を駆け回り、家事に勤しんでいた。
「うわぁ~、今日はいい天気♪
日差しも暖かくて、風もあんまり無くて、なんて気持ちいいのかしら♪♪
絶好のお洗濯日和ね♪」
洗濯篭いっぱいの洗濯物を物干し台に運び、さあ広げようかと空を見上げると、穏やかな暖かい光が降り注ぐ。
(元気だなぁ・・・)
僕らの中で、ただ1人の女の子で、既にこの家の総元締め・・・コホン・・・(この言い方はふさわしくないかな?)
“主婦”と化している彼女は、朝から忙しく働いていて、その声を聞いているだけで、何だか、こっちまで元気になってしまう気がする。
ああ、本当にいい天気だ・・・
僕も手伝った方がいいのかな・・・?
でもなぁ~・・・
この前、洗濯の手伝いしてた時、うっかり彼女の下着を手に取ってしまって、めちゃくちゃ怒られちゃったしなぁ~・・・
どうして、女の子のパンツってあんなに小さいんだろう?
あれで、お腹冷えないのかなぁー・・・
ハッ!
いけない、いけない!
パンツの事なんか考えちゃダメだ・・・!
これではまるで、変な趣味がある(変態)みたいではないか。
女の子の下着についてなんて・・・・色即是空・・・(んッ?)
――忙しいフランソワーズを手伝った方がいいような気はしているが、以前、ちょっと失敗していることに躊躇を覚えつつ、結局彼はソファーに体を預けたまま、読みかけの本を開いた。
ああ、ポカポカ気持ちいいなぁ~・・・
家の中にも太陽の暖かさと明るい日差しが差し込んでくる。
その心地よさに身を委ねながら、時は過ぎていった・・・
*** ***
「ふぅ~、やっと終わったわ♪」
山のような洗濯物を干し終わり、フランソワーズは天に向かって伸びをした。
一通りの家事を終えて、洗濯篭を戻すべくリビングを横切ると、ソファーからずり落ちそうになっているジョーの姿が目に入った。
(ジョー?)
長い前髪で表情が見えない。
スー・・・
側に寄ってみると、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「・・・寝ちゃってる・・・」
今にもソファーから落下しそうなスゴイ体勢ながらも器用にバランスをとって(?)、とても安らかな顔で、無防備にも彼は午睡していた。
「ジョーったら・・・・こんな所で寝てたら、風邪ひいちゃうのに・・・」
フランソワーズは溜息を1つ吐くと、落ちないように、そっとジョーの体勢を立て直す。
「ん・・・」と、少しだけ身じろぎしたが、起きることはなかった。
「・・・・」
でも・・・
珍しい、ジョーの居眠り姿・・・
しばし彼を観察してしまった。
(・・・こうして見ると、ジョーって本当にきれいな顔してる・・・・
均整のとれた顔立ち、スッと通った、ちょうど良い高さの鼻筋・・・ こんなにきれいな男の人って、ちょっといないわよね~)
ついつい見とれて、思わずウットリとしてしまう。
こんなにステキな男の人が、自分の彼(恋人)だなんて・・・と、思うと、何となく誇らしかった。
(・・・ホントにきれい・・・
この栗色の髪といい、今は瞑っているけど、開くと同じ色の瞳の色・・・それに・・・
きゃあっ♪ 睫毛長~い♪♪
くるんとカールまでしてる~!
いやん、どうしよう~~~~~~~♪♪)<何がだ!
1人、キャピキャピと、フランソワーズは盛り上がる。
その時、ピン!と、何かを思いついた。
(そ・う・だッ♪)
彼女は洗濯篭を慌てて片付け、キッチンに向かった。
***********
1っぽ~ん・・・
フランソワーズの手には、何やら小さな棒状のものが何本も握られている。
それらを、実に繊細な手つきで、丁寧に、数えながら、何かをしていた。
2っほ~ん・・・・♪
(ん・・・・)
何となく顔の周りがくすぐったい・・・
ウトウトと、気持ちよく夢の世界を浮遊していたジョーは、徐々に意識が覚醒し始めた。
3・・・・
(んン・・・・?)
ぼ・・・・
どうも、顔をくすぐられている感じがして、彼は微睡みの中から、パッチリと目を覚ました。
「んっ・・・と・・・ きゃあっ!」
目覚めると、驚いたように悲鳴をあげるフランソワーズの姿。
そして、バラバラと目の前に何かが散らばった。
「え・・・?」
「あ~あ・・・」
(な、なんだ・・・??)
起き抜けの目で確認した散らばった何かは、小さな木の棒の先に、赤い木の実を差したようななじみ深いもの。
何でこんな物が散らばっているのか、また、自分の身に何があったのか、全然把握できていなかった。
「・・・・・・・・・」
(マッチ棒???)
しばし呆然としていると、フランソワーズが、ガッカリとした様子で声をあげた。
「あ~あ・・・ せっかく、あと一本で、3本目乗っかる所だったのにぃ・・・」
「・・・は?」
(3本目?)
相変わらず、ジョーには何のことだか、さっぱりわからない。
“鳩が豆鉄砲喰らった”ような顔で、彼女に目を向けていた。
「ふ、フランソワーズ?」
「もうちょっと寝ててくれたら、いいのにぃ・・・・ジョーったら・・・」
「え゛・・・? 僕、寝てたの??」
ジトッと上目遣いに睨まれて、ここで、ようやく少しだけ状況が見えてきた。
どうやら自分は、うたた寝していたらしい・・・
「そうよ~。 すっごく気持ちよさそうに寝ていたのよ。」
「そうか・・・」
「だから、睫毛に何本マッチ棒が乗るか試してたのにぃ・・・」
「へ・・・?」
(ま、マッチ棒???)
ジョー、ますます混乱。
だが、そんなことはお構いなしに、落ちたマッチを拾いながら、フランソワーズは続けた。
「・・・・」
「あなたの顔見てたら、けっこう睫毛が長いんだなぁ~って、気が付いちゃったの・・・
で、何本くらいマッチが乗るものかな~って・・・♪」
(はい?!)
「・・・・」
「ようやく3本目が乗る所だったのにぃ・・・もう少し寝ててくれたら、何本くらい乗るものか確かめられたのになぁ~・・・はぁ~・・・」
「・・・・」
(はぁ~って・・・)汗
彼女の溜息には、どう答えていいのやら・・・呆れるやら、困惑するやら・・・
まあ、そうは言っても油断して惰眠を貪っていた彼にも、問題はあるが・・・(あるのか?)
ようやっと事の次第が飲み込めて、訊き返した。
「・・・フランソワーズ・・・」
「なぁに?」
「君は・・・・ 僕で遊んでいたわけ・・・?」
「う~ん・・・遊んでいたっていうのは、ちょっと違う気がするけどぉ・・・
まあ、ちょっとした確認よ、確認♪」
「確認って・・・」(汗汗)
(何のだよ・・・!)
思わず心で突っ込んでしまうジョー。
あくまで、面と向かっては言えません(<気ぃ、弱すぎ!)
「あのね・・・」
「あ~あ、本当に惜しかったわ。絶対3本は確実だったのに・・・ひょっとして4本目も乗るんじゃないかと期待してたんだけどぉ・・・」
「・・・・」
(勘弁してくれよ・・・)
やっぱり“女の子の気持ち”というものを理解するのは難しいようで・・・
とりあえず、尋ねた。
「・・・大体、何でそんな事思いつくんだよ・・・睫毛にマッチ棒乗せようって」
「だって・・・乗りそうな睫毛だったんだもん。」
「乗りそうなって・・・」
「それに楊枝じゃ、先尖(とんが)ってて危ないし、割り箸のっけるには長すぎるしー・・・ちょうどいいのって、マッチ棒かなって♪」
「そういう問題・・・?」(滝汗)
(僕が聞きたいのはそういう事じゃないんだけど・・・)
論点がずれた答えを返されて、ジョーは言葉を失う。
乗りそうな睫毛だからといって、寝ている間にマッチ棒を乗せられるという、このシチュエーション。
やっぱり理解の範疇を超えている。
それって単に、暇だから遊ばれた・・・という事ではないのだろうか?
(女の子って、わっかんないなー)
そんな事を思いながら、フランソワーズを見ていると、ようやくマッチを拾い上げ終えようとしていた。
彼女は彼女で、口には出さずにひとり語ちているのだが・・・彼は知る由もない。
(まったく・・・
せっかく家事仕事終わって一段落ついたのに、ジョー、寝てるんだもん・・・ つまんないじゃない!
今日は天気もいいから2人でどっか出かけられたらなー・・・て思っていたのに!
そういうの、全ッ然わかってないんだから!!)
拾い集めたマッチを、箱にしまうフランソワーズ
彼女を横顔を眺めながら、ジョーは思った。
(しかしなー・・ 睫毛長いって言われても、あんま嬉しくないよな・・・女の子じゃあるまいし・・・
それに、睫毛長いのは、彼女の方じゃないか。
あの、蒼くてパッチリした瞳を引き立たせてあまりあるような、あの長い睫毛・・・
よく見ると、くるんとカールまでしてて・・・ 可愛いよな~・・・////
化粧もしなくてあんなに可愛いなんて、彼女くらいなもんだよな。うん。(←ノロケ?)
彼女の方こそ、マッチ棒、たくさん乗りそう・・・)
と、考えて、ピンッ!と、来た。
「フランソワーズ」
「え・・・? きゃあっ!」
ドサッ!
・・・・ジョーも、思いついたら行動が早い。
ソファーから立ち上がった次の瞬間、彼女の腕を掴み、自分の胸へと抱きとめていた。
「ちょ・・・ジョーッ?! 何を・・・あっ!」
フランソワーズが抗議の声をあげる間もなくソファーに仰向けに横たえさせる。
彼女の顔を見つめながら、ジョーは言った。
「僕の睫毛が長いというけど、君の方が遙かに長いじゃないか。」
「え・・・?」
ドキッ
あまりに間近にジョーの顔が近づいた為、フランソワーズの胸が高鳴る。
そんな動揺を見抜いているのか、いないのか、気が付けばジョーは悪戯っ子のような顔になっていた。
「君の方がマッチ棒、乗りそうだ。僕にもやらせろ!」
「え・・・きゃあっ!」
彼女の手に握られていたマッチ箱を取り上げ、中から素早く何本ものマッチを取り出す。
それを強引に彼女の顔に近づけた。
「いやん! ジョー、やめて・・・」
「ほらほら、暴れない♪」
「ヤダったら・・・!」
「暴れちゃ、ダメだったらッ・・・」
「やめてったら・・・!」
「ダーメ!!」
首を振って、彼女は抵抗する。
それでも、ジョーは力ずくで、フランソワーズの睫毛に、マッチを乗せていった。
「いやぁん・・・」
「さんざん、僕の顔で遊んだんだから、お返しだっ!」
「くすぐったい・・・ やめてよー・・・」
「君も確認しとかないと・・・ね?」
「もう、ばかぁ・・・・うふふ・・・」
最初は抵抗していたが、次第に言われるがままに、マッチ棒を乗せていく。
そのうち、彼女も協力的になって、何本乗るか・・・と、挑戦していった。
で、
「1っぽ~ん、2ほ~ん・・・・5・・・ほ~ん・・・
わぁ、すごいや・・・フランソワーズ、5本も乗ったよ。もう一本乗るかな、6っぽ~ん・・・」
「も、もうだめ、限界! 目を開けていられないッ!!」
パチッ! バラバラバラバラ・・・
ギネスもん(?)の6本目を乗せようとした時、瞬きして、マッチがあたりに散らばる。
それを受け止める事もできず、「あ~あ」と、ジョーはがっかりしたような声をあげた。(<その前に、目ぇ開けたまま、マッチ棒乗せるってのもドーヨッ!)
「もうちょっとだったのに・・・ダメじゃないか、フランソワーズ・・・」
「ごめんなさい。でも、もう限界だったんですもの。あー、目がショボショボする」
「ああ、ダメだよ、そんなに擦っちゃ・・・」
ドライアイになりかけた瞳をゴシゴシ擦る彼女を、慌てて制止するジョー。
手首をそっと掴み、目から外させた。
「どれ・・・
ん、大丈夫。目は赤くなってない。 ダメだよ、擦っちゃ。
傷ついちゃうからね。」
「うん・・・////」
彼の手がそっと頬を支える。
ホッとするというか、安心するような、暖かい気持が湧き上がり、しばし見つめ合う。
何となく甘いムードが漂い、自然な流れでいくと、そのまま・・・・
『フランソワーズ・・・』
『ジョー・・・』
お互いの名を呼び合い、顔が近づき・・・
Chu・・・
てなコトになるのだが・・・
だが・・・・・
・・・・・・・
「もう一回やってみようか♪」
「そうね♪」
・・・・・・・・・・・・(-"-;)
リベンジ!
ジョーの手には、再びマッチ棒が握られた。
「じゃあ、いくよ、フランソワーズ♪」
「待って・・・・
今度は、ジョーの睫毛に乗せてみましょうよ♪ さっき、途中だったし♪♪」
「え~~~~~!」
「いいじゃない♪ 私、まだ目がショボショボしているんだもの♪♪」
「しょうがないな~」
そして、再度始まる。
「1っぽ~ん、2っほ~ん、3ぼ~んっ・・・4・・・」
バラバラバラ・・・・
「あ~あ・・・ やっぱり、ジョーは3本が限界かー」
「しょうがないよ。僕は君ほど、睫毛長くないし・・・ じゃ、今度はフランソワーズね♪」
「うん♪」
「1っぽ~ん、2っほ~ん・・・」
エンドレス・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・(-"-;)
と、いうわけで、ギルモア邸は、今日も平和かも・・・???<ヲイッ!!!
(おしまい)
おまけ>>
まっくさまからのコメント
おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいぃっっ!!
何でやね~~~~~~んっ!!!
お前ら、kiss くらいしろよッッ!!(嘆)
普通、そこまで甘いシチュエーションに持ち込んだら、チュウするだろ!チュウッ!!
そうだ! Chu! の1つや2つや3つや4つ・・・<落ち着け!
どぉして、こうなるんだよぉぉぉぉぉ~~~~(T.T)
ああ、当初の予定が・・・ この後の予定もあったはずなのに・・・・(困惑)
このカップルって、カップルって、カップルってぇ~~~~~~~(号泣)
勝手に動くな、キャラクターっ!←おのれの力量不足
でも、こんな風にお話の神様が暴走するのって、『スカール閣下の・・・』以来だな~(シミジミ・ぼそッ)
やっぱ、平ゼロのジョー&フランで色気だそうと思うと無理があるのだろうか???
って、事で失礼しました。
お礼
「ドルフィンジュニア」のまっくさまから春の頂きものを頂戴してしまいました!(狂喜乱舞)
春のお二人、本当にいいムードなのに・・・・結構期待したのに、最後は『びっくり日本新記録』ですか・・・(ひゅるるるるる・・・)
記録、それはいつも儚い。
一つの記録は、一瞬のうちに破られる運命を自ら持っている。
それでも人々は記録に挑む。
限りない可能性と、ロマンをいつも追い続ける・・・それが人間なんだ。
次の記録を作るのは、あなたかもしれない
あのあまりにも有名なナレーションとドラマチックな音楽(女性の合唱だったような・・・)が脳裏をよぎり、 スローモーションで記録に挑む2人の姿が目に浮かびました。 2人が見詰め合い、爽やかな汗がキラリと光るのはお約束。(若い方お分かりになりませんよね、すみません。私あの番組のファンだったもので)
それにしても、睫毛にマッチ5本とはさすがです>お嬢さん
お嬢さんには敵わなくとも3本も立派な記録です>ジョー君
さすがサイボーグは睫毛ひとつも剛性があるんですね。(-_-;ウーン
何のためですか?>ギルモア博士
ついでにお嬢さんの髪に割り箸は何膳乗る仕様ですか?
まっく様、ちょっとドキドキの楽しい話をありがとうございました♪
93SSです!!!!(喜)
ジョーがソファーでうたた寝、その姿に見とれるフラン嬢が起こした行動は・・・。
私はとある番組を思い出しました。わかった貴方は年長組~~~♪
ジョーがソファーでうたた寝、その姿に見とれるフラン嬢が起こした行動は・・・。
私はとある番組を思い出しました。わかった貴方は年長組~~~♪
『 微 睡 み 』
――冬にしてはポカポカと春めいて暖かいある日、フランソワーズはいつものようにパタパタと家中を駆け回り、家事に勤しんでいた。
「うわぁ~、今日はいい天気♪
日差しも暖かくて、風もあんまり無くて、なんて気持ちいいのかしら♪♪
絶好のお洗濯日和ね♪」
洗濯篭いっぱいの洗濯物を物干し台に運び、さあ広げようかと空を見上げると、穏やかな暖かい光が降り注ぐ。
(元気だなぁ・・・)
僕らの中で、ただ1人の女の子で、既にこの家の総元締め・・・コホン・・・(この言い方はふさわしくないかな?)
“主婦”と化している彼女は、朝から忙しく働いていて、その声を聞いているだけで、何だか、こっちまで元気になってしまう気がする。
ああ、本当にいい天気だ・・・
僕も手伝った方がいいのかな・・・?
でもなぁ~・・・
この前、洗濯の手伝いしてた時、うっかり彼女の下着を手に取ってしまって、めちゃくちゃ怒られちゃったしなぁ~・・・
どうして、女の子のパンツってあんなに小さいんだろう?
あれで、お腹冷えないのかなぁー・・・
ハッ!
いけない、いけない!
パンツの事なんか考えちゃダメだ・・・!
これではまるで、変な趣味がある(変態)みたいではないか。
女の子の下着についてなんて・・・・色即是空・・・(んッ?)
――忙しいフランソワーズを手伝った方がいいような気はしているが、以前、ちょっと失敗していることに躊躇を覚えつつ、結局彼はソファーに体を預けたまま、読みかけの本を開いた。
ああ、ポカポカ気持ちいいなぁ~・・・
家の中にも太陽の暖かさと明るい日差しが差し込んでくる。
その心地よさに身を委ねながら、時は過ぎていった・・・
*** ***
「ふぅ~、やっと終わったわ♪」
山のような洗濯物を干し終わり、フランソワーズは天に向かって伸びをした。
一通りの家事を終えて、洗濯篭を戻すべくリビングを横切ると、ソファーからずり落ちそうになっているジョーの姿が目に入った。
(ジョー?)
長い前髪で表情が見えない。
スー・・・
側に寄ってみると、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「・・・寝ちゃってる・・・」
今にもソファーから落下しそうなスゴイ体勢ながらも器用にバランスをとって(?)、とても安らかな顔で、無防備にも彼は午睡していた。
「ジョーったら・・・・こんな所で寝てたら、風邪ひいちゃうのに・・・」
フランソワーズは溜息を1つ吐くと、落ちないように、そっとジョーの体勢を立て直す。
「ん・・・」と、少しだけ身じろぎしたが、起きることはなかった。
「・・・・」
でも・・・
珍しい、ジョーの居眠り姿・・・
しばし彼を観察してしまった。
(・・・こうして見ると、ジョーって本当にきれいな顔してる・・・・
均整のとれた顔立ち、スッと通った、ちょうど良い高さの鼻筋・・・ こんなにきれいな男の人って、ちょっといないわよね~)
ついつい見とれて、思わずウットリとしてしまう。
こんなにステキな男の人が、自分の彼(恋人)だなんて・・・と、思うと、何となく誇らしかった。
(・・・ホントにきれい・・・
この栗色の髪といい、今は瞑っているけど、開くと同じ色の瞳の色・・・それに・・・
きゃあっ♪ 睫毛長~い♪♪
くるんとカールまでしてる~!
いやん、どうしよう~~~~~~~♪♪)<何がだ!
1人、キャピキャピと、フランソワーズは盛り上がる。
その時、ピン!と、何かを思いついた。
(そ・う・だッ♪)
彼女は洗濯篭を慌てて片付け、キッチンに向かった。
***********
1っぽ~ん・・・
フランソワーズの手には、何やら小さな棒状のものが何本も握られている。
それらを、実に繊細な手つきで、丁寧に、数えながら、何かをしていた。
2っほ~ん・・・・♪
(ん・・・・)
何となく顔の周りがくすぐったい・・・
ウトウトと、気持ちよく夢の世界を浮遊していたジョーは、徐々に意識が覚醒し始めた。
3・・・・
(んン・・・・?)
ぼ・・・・
どうも、顔をくすぐられている感じがして、彼は微睡みの中から、パッチリと目を覚ました。
「んっ・・・と・・・ きゃあっ!」
目覚めると、驚いたように悲鳴をあげるフランソワーズの姿。
そして、バラバラと目の前に何かが散らばった。
「え・・・?」
「あ~あ・・・」
(な、なんだ・・・??)
起き抜けの目で確認した散らばった何かは、小さな木の棒の先に、赤い木の実を差したようななじみ深いもの。
何でこんな物が散らばっているのか、また、自分の身に何があったのか、全然把握できていなかった。
「・・・・・・・・・」
(マッチ棒???)
しばし呆然としていると、フランソワーズが、ガッカリとした様子で声をあげた。
「あ~あ・・・ せっかく、あと一本で、3本目乗っかる所だったのにぃ・・・」
「・・・は?」
(3本目?)
相変わらず、ジョーには何のことだか、さっぱりわからない。
“鳩が豆鉄砲喰らった”ような顔で、彼女に目を向けていた。
「ふ、フランソワーズ?」
「もうちょっと寝ててくれたら、いいのにぃ・・・・ジョーったら・・・」
「え゛・・・? 僕、寝てたの??」
ジトッと上目遣いに睨まれて、ここで、ようやく少しだけ状況が見えてきた。
どうやら自分は、うたた寝していたらしい・・・
「そうよ~。 すっごく気持ちよさそうに寝ていたのよ。」
「そうか・・・」
「だから、睫毛に何本マッチ棒が乗るか試してたのにぃ・・・」
「へ・・・?」
(ま、マッチ棒???)
ジョー、ますます混乱。
だが、そんなことはお構いなしに、落ちたマッチを拾いながら、フランソワーズは続けた。
「・・・・」
「あなたの顔見てたら、けっこう睫毛が長いんだなぁ~って、気が付いちゃったの・・・
で、何本くらいマッチが乗るものかな~って・・・♪」
(はい?!)
「・・・・」
「ようやく3本目が乗る所だったのにぃ・・・もう少し寝ててくれたら、何本くらい乗るものか確かめられたのになぁ~・・・はぁ~・・・」
「・・・・」
(はぁ~って・・・)汗
彼女の溜息には、どう答えていいのやら・・・呆れるやら、困惑するやら・・・
まあ、そうは言っても油断して惰眠を貪っていた彼にも、問題はあるが・・・(あるのか?)
ようやっと事の次第が飲み込めて、訊き返した。
「・・・フランソワーズ・・・」
「なぁに?」
「君は・・・・ 僕で遊んでいたわけ・・・?」
「う~ん・・・遊んでいたっていうのは、ちょっと違う気がするけどぉ・・・
まあ、ちょっとした確認よ、確認♪」
「確認って・・・」(汗汗)
(何のだよ・・・!)
思わず心で突っ込んでしまうジョー。
あくまで、面と向かっては言えません(<気ぃ、弱すぎ!)
「あのね・・・」
「あ~あ、本当に惜しかったわ。絶対3本は確実だったのに・・・ひょっとして4本目も乗るんじゃないかと期待してたんだけどぉ・・・」
「・・・・」
(勘弁してくれよ・・・)
やっぱり“女の子の気持ち”というものを理解するのは難しいようで・・・
とりあえず、尋ねた。
「・・・大体、何でそんな事思いつくんだよ・・・睫毛にマッチ棒乗せようって」
「だって・・・乗りそうな睫毛だったんだもん。」
「乗りそうなって・・・」
「それに楊枝じゃ、先尖(とんが)ってて危ないし、割り箸のっけるには長すぎるしー・・・ちょうどいいのって、マッチ棒かなって♪」
「そういう問題・・・?」(滝汗)
(僕が聞きたいのはそういう事じゃないんだけど・・・)
論点がずれた答えを返されて、ジョーは言葉を失う。
乗りそうな睫毛だからといって、寝ている間にマッチ棒を乗せられるという、このシチュエーション。
やっぱり理解の範疇を超えている。
それって単に、暇だから遊ばれた・・・という事ではないのだろうか?
(女の子って、わっかんないなー)
そんな事を思いながら、フランソワーズを見ていると、ようやくマッチを拾い上げ終えようとしていた。
彼女は彼女で、口には出さずにひとり語ちているのだが・・・彼は知る由もない。
(まったく・・・
せっかく家事仕事終わって一段落ついたのに、ジョー、寝てるんだもん・・・ つまんないじゃない!
今日は天気もいいから2人でどっか出かけられたらなー・・・て思っていたのに!
そういうの、全ッ然わかってないんだから!!)
拾い集めたマッチを、箱にしまうフランソワーズ
彼女を横顔を眺めながら、ジョーは思った。
(しかしなー・・ 睫毛長いって言われても、あんま嬉しくないよな・・・女の子じゃあるまいし・・・
それに、睫毛長いのは、彼女の方じゃないか。
あの、蒼くてパッチリした瞳を引き立たせてあまりあるような、あの長い睫毛・・・
よく見ると、くるんとカールまでしてて・・・ 可愛いよな~・・・////
化粧もしなくてあんなに可愛いなんて、彼女くらいなもんだよな。うん。(←ノロケ?)
彼女の方こそ、マッチ棒、たくさん乗りそう・・・)
と、考えて、ピンッ!と、来た。
「フランソワーズ」
「え・・・? きゃあっ!」
ドサッ!
・・・・ジョーも、思いついたら行動が早い。
ソファーから立ち上がった次の瞬間、彼女の腕を掴み、自分の胸へと抱きとめていた。
「ちょ・・・ジョーッ?! 何を・・・あっ!」
フランソワーズが抗議の声をあげる間もなくソファーに仰向けに横たえさせる。
彼女の顔を見つめながら、ジョーは言った。
「僕の睫毛が長いというけど、君の方が遙かに長いじゃないか。」
「え・・・?」
ドキッ
あまりに間近にジョーの顔が近づいた為、フランソワーズの胸が高鳴る。
そんな動揺を見抜いているのか、いないのか、気が付けばジョーは悪戯っ子のような顔になっていた。
「君の方がマッチ棒、乗りそうだ。僕にもやらせろ!」
「え・・・きゃあっ!」
彼女の手に握られていたマッチ箱を取り上げ、中から素早く何本ものマッチを取り出す。
それを強引に彼女の顔に近づけた。
「いやん! ジョー、やめて・・・」
「ほらほら、暴れない♪」
「ヤダったら・・・!」
「暴れちゃ、ダメだったらッ・・・」
「やめてったら・・・!」
「ダーメ!!」
首を振って、彼女は抵抗する。
それでも、ジョーは力ずくで、フランソワーズの睫毛に、マッチを乗せていった。
「いやぁん・・・」
「さんざん、僕の顔で遊んだんだから、お返しだっ!」
「くすぐったい・・・ やめてよー・・・」
「君も確認しとかないと・・・ね?」
「もう、ばかぁ・・・・うふふ・・・」
最初は抵抗していたが、次第に言われるがままに、マッチ棒を乗せていく。
そのうち、彼女も協力的になって、何本乗るか・・・と、挑戦していった。
で、
「1っぽ~ん、2ほ~ん・・・・5・・・ほ~ん・・・
わぁ、すごいや・・・フランソワーズ、5本も乗ったよ。もう一本乗るかな、6っぽ~ん・・・」
「も、もうだめ、限界! 目を開けていられないッ!!」
パチッ! バラバラバラバラ・・・
ギネスもん(?)の6本目を乗せようとした時、瞬きして、マッチがあたりに散らばる。
それを受け止める事もできず、「あ~あ」と、ジョーはがっかりしたような声をあげた。(<その前に、目ぇ開けたまま、マッチ棒乗せるってのもドーヨッ!)
「もうちょっとだったのに・・・ダメじゃないか、フランソワーズ・・・」
「ごめんなさい。でも、もう限界だったんですもの。あー、目がショボショボする」
「ああ、ダメだよ、そんなに擦っちゃ・・・」
ドライアイになりかけた瞳をゴシゴシ擦る彼女を、慌てて制止するジョー。
手首をそっと掴み、目から外させた。
「どれ・・・
ん、大丈夫。目は赤くなってない。 ダメだよ、擦っちゃ。
傷ついちゃうからね。」
「うん・・・////」
彼の手がそっと頬を支える。
ホッとするというか、安心するような、暖かい気持が湧き上がり、しばし見つめ合う。
何となく甘いムードが漂い、自然な流れでいくと、そのまま・・・・
『フランソワーズ・・・』
『ジョー・・・』
お互いの名を呼び合い、顔が近づき・・・
Chu・・・
てなコトになるのだが・・・
だが・・・・・
・・・・・・・
「もう一回やってみようか♪」
「そうね♪」
・・・・・・・・・・・・(-"-;)
リベンジ!
ジョーの手には、再びマッチ棒が握られた。
「じゃあ、いくよ、フランソワーズ♪」
「待って・・・・
今度は、ジョーの睫毛に乗せてみましょうよ♪ さっき、途中だったし♪♪」
「え~~~~~!」
「いいじゃない♪ 私、まだ目がショボショボしているんだもの♪♪」
「しょうがないな~」
そして、再度始まる。
「1っぽ~ん、2っほ~ん、3ぼ~んっ・・・4・・・」
バラバラバラ・・・・
「あ~あ・・・ やっぱり、ジョーは3本が限界かー」
「しょうがないよ。僕は君ほど、睫毛長くないし・・・ じゃ、今度はフランソワーズね♪」
「うん♪」
「1っぽ~ん、2っほ~ん・・・」
エンドレス・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・(-"-;)
と、いうわけで、ギルモア邸は、今日も平和かも・・・???<ヲイッ!!!
(おしまい)
おまけ>>
まっくさまからのコメント
おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいぃっっ!!
何でやね~~~~~~んっ!!!
お前ら、kiss くらいしろよッッ!!(嘆)
普通、そこまで甘いシチュエーションに持ち込んだら、チュウするだろ!チュウッ!!
そうだ! Chu! の1つや2つや3つや4つ・・・<落ち着け!
どぉして、こうなるんだよぉぉぉぉぉ~~~~(T.T)
ああ、当初の予定が・・・ この後の予定もあったはずなのに・・・・(困惑)
このカップルって、カップルって、カップルってぇ~~~~~~~(号泣)
勝手に動くな、キャラクターっ!←おのれの力量不足
でも、こんな風にお話の神様が暴走するのって、『スカール閣下の・・・』以来だな~(シミジミ・ぼそッ)
やっぱ、平ゼロのジョー&フランで色気だそうと思うと無理があるのだろうか???
って、事で失礼しました。
お礼
「ドルフィンジュニア」のまっくさまから春の頂きものを頂戴してしまいました!(狂喜乱舞)
春のお二人、本当にいいムードなのに・・・・結構期待したのに、最後は『びっくり日本新記録』ですか・・・(ひゅるるるるる・・・)
記録、それはいつも儚い。
一つの記録は、一瞬のうちに破られる運命を自ら持っている。
それでも人々は記録に挑む。
限りない可能性と、ロマンをいつも追い続ける・・・それが人間なんだ。
次の記録を作るのは、あなたかもしれない
あのあまりにも有名なナレーションとドラマチックな音楽(女性の合唱だったような・・・)が脳裏をよぎり、 スローモーションで記録に挑む2人の姿が目に浮かびました。 2人が見詰め合い、爽やかな汗がキラリと光るのはお約束。(若い方お分かりになりませんよね、すみません。私あの番組のファンだったもので)
それにしても、睫毛にマッチ5本とはさすがです>お嬢さん
お嬢さんには敵わなくとも3本も立派な記録です>ジョー君
さすがサイボーグは睫毛ひとつも剛性があるんですね。(-_-;ウーン
何のためですか?>ギルモア博士
ついでにお嬢さんの髪に割り箸は何膳乗る仕様ですか?
まっく様、ちょっとドキドキの楽しい話をありがとうございました♪
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