手のひらの未来(祈1ヶ月) (遠雷(ささげモノ)/
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「いのり♪」
「・・・」
「いー のー り♪」
規則正しい寝息が穏やかに響く。
僕は祈が寝ている小さな布団の隣に横たわり、飽きることなくその寝顔を見つめていた。いくら呼びかけたって応えが返って来るはずは無いのに、それでも、その名前を呼びたくて、さっきから同じことを何度も繰り返していた。
どうしてこんなにいとおしんだろう。
どうしてこんなにも優しい気持ちになれるのだろう。
掌にすっぽりと納まってしまいそうな頭。
ふんわりと閉じられた瞳。
それを縁取る栗色の睫毛。
ピクピクと動く小ぶりな鼻にキリリと結ばれた口元。
腕や脚は少し力を入れて握っただけでポキリ折れてしまいそうで・・・
何もかもが驚くほどに華奢なつくり。
身体のパーツ全てが精巧に出来たミニチュアのよう。
それでも、両手両足を無防備に開いて眠るその姿は、「護られている」という安心に満ちあふれている。
「いー のー りー♪」
僕はもう一度彼女の名前を呟きながら、まだふくっらとはしていないその頬を、そっとつついてみた。
・・・・すると―――
はわわわわ・・・と祈が口を大きく開け、刺激のした方へと顔を寄せた。
― クッチュッ
自分の指が思いもよらず強い力で吸われたことに驚いた。
― クチュ クチュ クチュ
祈が吸っているのは僕の指。
乳首と間違えているらしい。
乳が出るはずもないのに、そんなこと夢にも思っていないのだろう。ただただ無心に指を吸い続ける。
指先に伝わる彼女の必死の力。
「生きる」 そのことだけに懸命になっている姿に少しだけ感動した。
こんなにも小さな身体なのに、内に秘めるエネルギーはどれほどのものなのだろう。
祈はしばし辛抱強く僕の指を吸い続けていたが、期待するものが出てこないとわかると、あっけなくそれを放棄した。
現金なものだね・・・、僕は吐き出された人差し指を見て苦笑いをした。
おだやかな昼下がり。
外は晴れ渡っている。
レースのカーテンがふわっと膨らむと、やわらかな風が檜の香りをまとって祈の産毛をそっとくすぐっていった。
・・・その時。
「ヒック」
えっ?
「ヒック」
しゃっくり?
「ヒック」
どうしよう・・・・
「ヒック」
困ったな・・・。
「ヒック」
あかちゃんのしゃっくりって笑えない。
しゃっくりをする度に祈の胸は、その小さな身体に不釣合いなほど大きく凹む。
それは胸の皮と背中の皮がくっついてしまいそうなほどだ。
異常なほど・・・そう、異常なのかもしれない。
胸がこんなに凹むなんてどこかおかしいに違いない。
その様子を見つめるうちに僕の不安はだんだんと言い知れぬ恐怖へと変わり始めた。
もしかしたら、彼女は、祈は、恐ろしい病気ではないかと。
これは――
しゃっくりに見えるけど・・・
きっと――
しゃっくりなんかじゃない!
「ヒック」
多分、「しゃっくり様呼吸器障害」・・・そんな感じの難しい病名。そう考えればこの異常なまでの凹みも説明がつきそうだ。
「ヒック」
枕もとに目をやると、そこには体温計。
そうだ、念のために・・・・。
僕はそれを祈の耳にそっとあてた。
「ヒック」
ピピッ・ピピッ♪
結果を見て、僕は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
大変だ・・・・
祈はやっぱり病魔に蝕まれている―――!!
「ヒック」
祈は先天性の重い病気で
きっと難しい手術が必要で
そう考えたら涙がこぼれた。
僕たちはサイボーグ。生身ではない。
多分、遺伝子が不完全だったんだろう。
だとすれば 遺伝子の病気?
ごめんよ、祈・・・・。
僕は君を不幸にしてしまったのかもしれない・・・・・。
「ヒック」
「ねぇ、お茶でも飲まない?」
部屋の外で子供を起こさないように気遣う遠慮がちな声がした。
「ヒック」
開いた襖。そこから顔を覗かせたのは、周。
ふんわりと微笑んだ鈍色の瞳が、僕の表情を見て険しい色に変わった。
「何かあった?」
「ヒック」
ただならぬ僕の表情を察して、周が部屋へと入ってきた。
僕は祈の布団を見つめつつ、絶望的な思いで「祈は病気なんだ・・・」一言呟いた。
「病気? どうして? 突然。」意外だと言わんばかりの声。
「熱があるんだ。それに、身体のどこかがひどく痙攣しているみたいで・・・・胸の辺りが苦しそうに動くんだ。」
「ヒック」
「ほら、まただ。」
「・・・・・。」
「僕たちってサイボーグだろう? その・・ちゃんとした遺伝子が出来なかったんじゃないかなって。それで祈は重い病気になってしまったんだと思うんだ。」
「熱って、これ?」周は体温計を僕に無造作に差し出した。
「そう。」
「熱って・・・たった37度4分よ。」
「たった? だって、熱があるじゃないか!」僕の囁く声は少しだけ強さを増した。
僕の必死の反論に、周は盛大に溜息をついた。
「赤ちゃんは体温が高いのよ。37度5分までは平熱。」
「えっ?」
「だから、祈も平熱。」
「じゃ、じゃあ、この痙攣は?」
「痙攣って・・・・しゃっくりでしょう?」
「しゃっくりに見えるけれど、これは絶対何かの痙攣だよ。」僕は必死で食い下がる。
「気にする必要なし。」
「でも!」
「第一、止まってるし。」
周の冷静すぎる指摘に、祈に目をやると、確かにそれは・・・・・治まっていた。
「しゃっくりは横隔膜の痙攣だから、ジョーの言ってることはあながち間違ってないけれど、少なくとも先天性の病気でも、遺伝子の問題でもないわ。極々普通のことだから大丈夫。」
―まぁ、赤ちゃんのしゃっくりって心配する親は多いけどね。― 僕の気持ちを察してか、少し笑いながら周は付け足した。
「・・・・。」
「他に何か問題は?」
「・・・・。」
「当然、無いわよね。」
「・・・・うん」
「新米パパは気苦労が多くて大変ね。」
周は労うように僕の肩を叩き、再び赤ん坊に目をやる。
「良く眠ってるじゃない・・・。赤ちゃんは良く食べて、よく寝て、良く泣けば、それで十分。祈は健康そのものだから大丈夫よ。」
「そう、だね。」
「まだ不安?」
「ううん。もう大丈夫。ありがとう。」
「あれっ、周、来てたの?」
暑いからとシャワーを浴びに行ったフランソワーズが戻ってきた。
「うん。”ひ孫詣で”と”育児相談”。」
「なにそれ。変なの。」
そういってフランソワーズは小声で可笑しそうに笑った。
窓の外から風に乗って子供達がはしゃぐ声が微かに聞こえる。
「よく寝てるね。」
「本当に。」
僕達は布団を取り囲むように祈を見つめる。
「赤ちゃんって、不思議。こうやってみんなを惹きつける。」
「そうだね・・・」
「思い出すわ。灯にそっくり。」
「かあさんに?」
「えぇ。」
「僕も・・・、」
こうやって愛されていたのかな、と言葉が出かかったが、のどの奥で絡み付いて声にはならなかった。
「そうよ、あなただって、こうやって愛されたのよ。」
「そうなんだ・・・。」
少しくすぐったいような気持ちを紛らわせるように、僕は祈の手のひらをそっと開いて自分の人差し指を握らせてみた。小さな手はそれをキュッと握り返す。
「ブラックゴーストから脱走したときもね、こうやってイワンと握手したんだ。あの時のイワンは力強ささえ感じたのに・・・。祈は必死で僕にしがみついているみたいだ。」
「頼られてるのよ。」と周
「責任重大ね、パパは。」フランソワーズが微笑む
「でも・・・」
周は窓の外の景色を眩しそうに眺めた。
「子育てなんてあっという間。光が走っていくみたいに・・・。」
時間を止められてしまった自分達なら、おそらく一瞬の出来事になるだろう。
「さて、お邪魔のようだし・・・」と周は重そうに立ち上がると、臨月間近のおなかを支えながら部屋を後にしようとした・・・・その時。
「ジョーどうしたの?」
切羽詰ったフランソワーズの声が周の背後から聞こえた。
血の気を失ったジョーの横顔。
フランソワーズが肩を揺する。
だが、ジョーは言葉を失い、自分の手元を呆然と見つめているだけだった。
「今度はどうしたの?」周が再びフランソワーズの脇に座りなおす。
「ジョーが変なの。」
「ついさっきまで普通だったじゃない?」
「でも・・」
フランソワーズの言う通り、ジョーは肩を震わせ、わなわなと口元がゆれる。
泣き出しそうな横顔。こちらの呼びかけはまったく聞こえていないらしい。
「ねえ、ジョー、しっかりして!」
声を荒げるようにフランソワーズが身体ごと揺さぶる。
「うわゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ジョーの絶叫が家中に響き渡った。
突然の叫び声に驚き、目を覚まし、泣き叫ぶ祈。
「 どうしたの! 」
「祈の・・・、祈の・・・・」
「祈がどうしたの?」
「祈の手相に・・・・」
「 手相ぉ? 」
「結婚線が・・・・」
「!」
「くっきりとはいってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「親ばか・・・というかバカ親。」 周はポツリと呟いた。
「・・・・祈、絶対に苦労するわよ。」
「アタシもそう思う。」
呆れ顔の大姑と嫁は、顔を見合わせてクスリと笑いあった。
被害者の祈はひたすら泣き続けていた―――
人の親の心はやみにあらねども
子を思ふ道にまどひぬるかな
藤原兼輔
(ちょっと違う? いや、かなり違う。)
juiさまのサイト凛樹館、「遠雷」の
パラレルワールドにてフランちゃんがジョー君のお子様をご出産されまして、
そのお祝いに無理やり押し付けた献上したブツです。
全てが実話に基づくお話です。
バカ親はジョー君ではなく、えぇ、私です・・・・。
(除く 結婚線<それは友人の話)
ネタのためならば、友人だって売る卑怯者HOIHO
3,9 周 祈(ジョーとフランの子供)
ジョーの親バカっぷりをご覧ください
(ファンの方、すみません。いつものことですが)
ジョーの親バカっぷりをご覧ください
(ファンの方、すみません。いつものことですが)
「いのり♪」
「・・・」
「いー のー り♪」
規則正しい寝息が穏やかに響く。
僕は祈が寝ている小さな布団の隣に横たわり、飽きることなくその寝顔を見つめていた。いくら呼びかけたって応えが返って来るはずは無いのに、それでも、その名前を呼びたくて、さっきから同じことを何度も繰り返していた。
どうしてこんなにいとおしんだろう。
どうしてこんなにも優しい気持ちになれるのだろう。
掌にすっぽりと納まってしまいそうな頭。
ふんわりと閉じられた瞳。
それを縁取る栗色の睫毛。
ピクピクと動く小ぶりな鼻にキリリと結ばれた口元。
腕や脚は少し力を入れて握っただけでポキリ折れてしまいそうで・・・
何もかもが驚くほどに華奢なつくり。
身体のパーツ全てが精巧に出来たミニチュアのよう。
それでも、両手両足を無防備に開いて眠るその姿は、「護られている」という安心に満ちあふれている。
「いー のー りー♪」
僕はもう一度彼女の名前を呟きながら、まだふくっらとはしていないその頬を、そっとつついてみた。
・・・・すると―――
はわわわわ・・・と祈が口を大きく開け、刺激のした方へと顔を寄せた。
― クッチュッ
自分の指が思いもよらず強い力で吸われたことに驚いた。
― クチュ クチュ クチュ
祈が吸っているのは僕の指。
乳首と間違えているらしい。
乳が出るはずもないのに、そんなこと夢にも思っていないのだろう。ただただ無心に指を吸い続ける。
指先に伝わる彼女の必死の力。
「生きる」 そのことだけに懸命になっている姿に少しだけ感動した。
こんなにも小さな身体なのに、内に秘めるエネルギーはどれほどのものなのだろう。
祈はしばし辛抱強く僕の指を吸い続けていたが、期待するものが出てこないとわかると、あっけなくそれを放棄した。
現金なものだね・・・、僕は吐き出された人差し指を見て苦笑いをした。
おだやかな昼下がり。
外は晴れ渡っている。
レースのカーテンがふわっと膨らむと、やわらかな風が檜の香りをまとって祈の産毛をそっとくすぐっていった。
・・・その時。
「ヒック」
えっ?
「ヒック」
しゃっくり?
「ヒック」
どうしよう・・・・
「ヒック」
困ったな・・・。
「ヒック」
あかちゃんのしゃっくりって笑えない。
しゃっくりをする度に祈の胸は、その小さな身体に不釣合いなほど大きく凹む。
それは胸の皮と背中の皮がくっついてしまいそうなほどだ。
異常なほど・・・そう、異常なのかもしれない。
胸がこんなに凹むなんてどこかおかしいに違いない。
その様子を見つめるうちに僕の不安はだんだんと言い知れぬ恐怖へと変わり始めた。
もしかしたら、彼女は、祈は、恐ろしい病気ではないかと。
これは――
しゃっくりに見えるけど・・・
きっと――
しゃっくりなんかじゃない!
「ヒック」
多分、「しゃっくり様呼吸器障害」・・・そんな感じの難しい病名。そう考えればこの異常なまでの凹みも説明がつきそうだ。
「ヒック」
枕もとに目をやると、そこには体温計。
そうだ、念のために・・・・。
僕はそれを祈の耳にそっとあてた。
「ヒック」
ピピッ・ピピッ♪
結果を見て、僕は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
大変だ・・・・
祈はやっぱり病魔に蝕まれている―――!!
「ヒック」
祈は先天性の重い病気で
きっと難しい手術が必要で
そう考えたら涙がこぼれた。
僕たちはサイボーグ。生身ではない。
多分、遺伝子が不完全だったんだろう。
だとすれば 遺伝子の病気?
ごめんよ、祈・・・・。
僕は君を不幸にしてしまったのかもしれない・・・・・。
「ヒック」
「ねぇ、お茶でも飲まない?」
部屋の外で子供を起こさないように気遣う遠慮がちな声がした。
「ヒック」
開いた襖。そこから顔を覗かせたのは、周。
ふんわりと微笑んだ鈍色の瞳が、僕の表情を見て険しい色に変わった。
「何かあった?」
「ヒック」
ただならぬ僕の表情を察して、周が部屋へと入ってきた。
僕は祈の布団を見つめつつ、絶望的な思いで「祈は病気なんだ・・・」一言呟いた。
「病気? どうして? 突然。」意外だと言わんばかりの声。
「熱があるんだ。それに、身体のどこかがひどく痙攣しているみたいで・・・・胸の辺りが苦しそうに動くんだ。」
「ヒック」
「ほら、まただ。」
「・・・・・。」
「僕たちってサイボーグだろう? その・・ちゃんとした遺伝子が出来なかったんじゃないかなって。それで祈は重い病気になってしまったんだと思うんだ。」
「熱って、これ?」周は体温計を僕に無造作に差し出した。
「そう。」
「熱って・・・たった37度4分よ。」
「たった? だって、熱があるじゃないか!」僕の囁く声は少しだけ強さを増した。
僕の必死の反論に、周は盛大に溜息をついた。
「赤ちゃんは体温が高いのよ。37度5分までは平熱。」
「えっ?」
「だから、祈も平熱。」
「じゃ、じゃあ、この痙攣は?」
「痙攣って・・・・しゃっくりでしょう?」
「しゃっくりに見えるけれど、これは絶対何かの痙攣だよ。」僕は必死で食い下がる。
「気にする必要なし。」
「でも!」
「第一、止まってるし。」
周の冷静すぎる指摘に、祈に目をやると、確かにそれは・・・・・治まっていた。
「しゃっくりは横隔膜の痙攣だから、ジョーの言ってることはあながち間違ってないけれど、少なくとも先天性の病気でも、遺伝子の問題でもないわ。極々普通のことだから大丈夫。」
―まぁ、赤ちゃんのしゃっくりって心配する親は多いけどね。― 僕の気持ちを察してか、少し笑いながら周は付け足した。
「・・・・。」
「他に何か問題は?」
「・・・・。」
「当然、無いわよね。」
「・・・・うん」
「新米パパは気苦労が多くて大変ね。」
周は労うように僕の肩を叩き、再び赤ん坊に目をやる。
「良く眠ってるじゃない・・・。赤ちゃんは良く食べて、よく寝て、良く泣けば、それで十分。祈は健康そのものだから大丈夫よ。」
「そう、だね。」
「まだ不安?」
「ううん。もう大丈夫。ありがとう。」
「あれっ、周、来てたの?」
暑いからとシャワーを浴びに行ったフランソワーズが戻ってきた。
「うん。”ひ孫詣で”と”育児相談”。」
「なにそれ。変なの。」
そういってフランソワーズは小声で可笑しそうに笑った。
窓の外から風に乗って子供達がはしゃぐ声が微かに聞こえる。
「よく寝てるね。」
「本当に。」
僕達は布団を取り囲むように祈を見つめる。
「赤ちゃんって、不思議。こうやってみんなを惹きつける。」
「そうだね・・・」
「思い出すわ。灯にそっくり。」
「かあさんに?」
「えぇ。」
「僕も・・・、」
こうやって愛されていたのかな、と言葉が出かかったが、のどの奥で絡み付いて声にはならなかった。
「そうよ、あなただって、こうやって愛されたのよ。」
「そうなんだ・・・。」
少しくすぐったいような気持ちを紛らわせるように、僕は祈の手のひらをそっと開いて自分の人差し指を握らせてみた。小さな手はそれをキュッと握り返す。
「ブラックゴーストから脱走したときもね、こうやってイワンと握手したんだ。あの時のイワンは力強ささえ感じたのに・・・。祈は必死で僕にしがみついているみたいだ。」
「頼られてるのよ。」と周
「責任重大ね、パパは。」フランソワーズが微笑む
「でも・・・」
周は窓の外の景色を眩しそうに眺めた。
「子育てなんてあっという間。光が走っていくみたいに・・・。」
時間を止められてしまった自分達なら、おそらく一瞬の出来事になるだろう。
「さて、お邪魔のようだし・・・」と周は重そうに立ち上がると、臨月間近のおなかを支えながら部屋を後にしようとした・・・・その時。
「ジョーどうしたの?」
切羽詰ったフランソワーズの声が周の背後から聞こえた。
血の気を失ったジョーの横顔。
フランソワーズが肩を揺する。
だが、ジョーは言葉を失い、自分の手元を呆然と見つめているだけだった。
「今度はどうしたの?」周が再びフランソワーズの脇に座りなおす。
「ジョーが変なの。」
「ついさっきまで普通だったじゃない?」
「でも・・」
フランソワーズの言う通り、ジョーは肩を震わせ、わなわなと口元がゆれる。
泣き出しそうな横顔。こちらの呼びかけはまったく聞こえていないらしい。
「ねえ、ジョー、しっかりして!」
声を荒げるようにフランソワーズが身体ごと揺さぶる。
「うわゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ジョーの絶叫が家中に響き渡った。
突然の叫び声に驚き、目を覚まし、泣き叫ぶ祈。
「 どうしたの! 」
「祈の・・・、祈の・・・・」
「祈がどうしたの?」
「祈の手相に・・・・」
「 手相ぉ? 」
「結婚線が・・・・」
「!」
「くっきりとはいってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「親ばか・・・というかバカ親。」 周はポツリと呟いた。
「・・・・祈、絶対に苦労するわよ。」
「アタシもそう思う。」
呆れ顔の大姑と嫁は、顔を見合わせてクスリと笑いあった。
被害者の祈はひたすら泣き続けていた―――
人の親の心はやみにあらねども
子を思ふ道にまどひぬるかな
藤原兼輔
(ちょっと違う? いや、かなり違う。)
juiさまのサイト凛樹館、「遠雷」の
パラレルワールドにてフランちゃんがジョー君のお子様をご出産されまして、
そのお祝いに
全てが実話に基づくお話です。
バカ親はジョー君ではなく、えぇ、私です・・・・。
(除く 結婚線<それは友人の話)
ネタのためならば、友人だって売る卑怯者HOIHO
(03年7月25日jui様宅へお嫁入り)
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