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Space Communication  (その他Comments(0) )

1月24日 25日のお嬢さん&博士のお誕生日お祝いブツ。
超銀設定です。




 イシュメールの青い機体が光を浴びながら空へと消えていく。
 ワシはただ見つめることしか出来なかった。

 自分だって行くつもりでいた。
 独りぼっちにされるなど、予想すらしていなかった。
 なのに、あの子は厳しい顔を崩そうとはしなかった。
「そんな危険な旅に、博士を連れて行けるわけがないでしょう?」
 年寄りは足手惑いだとでも?
 自分たちの不具合は自分たちで処理できるとでも?
 ワシが行かなければ、誰が君たちを なおす?

 ワシの叫びは、しかし、誰の心も動かすことが出来なかった。
 誰一人としてワシをイシュメールに乗船させてはくれなかった。

 ただ、空へと消えていくイシュメールが再び戻ってくることを信じるほかなかった。





「あらっ、そういえば・・」
「どうした003?」
 地球を出発してから何日が過ぎたろう? 
 船から見える景色は宇宙空間だけ。 当たり前のように享受していた太陽の光もすでに遠い。  日付を知る術を知らないわけではないが、それを意識することさえ無駄に思え、 だんたん日付の感覚が薄くなっていくのは仕方の無いことだったのかもしれない。  マメに日付をチェックしていた003だからこそ、そのことに気付いたのだろう。
 003は009の言葉には答えることなく、背後の008へ声をかけた。
「008、ここから地球までの距離ってどのくらいかしら?」
「だいたい……500AU(天文単位)だね」
「……ってことは、こちらの通信が地球に届くのは……」
「そうだなぁ……3日ってとこかな。 ただ、この距離だからね、無事に届かないかもしれないよ」
「だから003、一体どうしたんだ? 突然そんなことを聞いて」
「いやだわ、ジョー 忘れたの?」
 ミッションでは、決して仲間を名前で呼ばない彼女が「ジョー」とたしなめる。
「もうすぐ博士の誕生日なのよ。忘れてしまったの?」
「そうかぁ…… もうそんな時期なんだ……」
「きっと寂しがってるアルネ」
「009の厳しい仕打ちで、今、博士は猛烈に孤独な身を味わっていることだろう」
からかう007に、「だからと言って、連れて来られるわけが無いだろう?」とムキになる009を002が冗談だからと諌めた。 さらに004が続ける。
「博士の相棒、イワンもいねぇしな」
 遠くカデッツ要塞星に連れ去られた幼い仲間の名が挙がると、003は少し辛そうな表情を浮かべた。 が、無理に明るい表情を作る。
「ね、地球に……博士にお祝いのメッセージを送りましょう!」






 1月25日、突然の通信に、国際宇宙センターは緊張が走った。
「ギルモア博士。来てください!! イシュメールから通信です」
「な……、なんじゃ、緊急事態か? あ、あ、あの子達は……な、何と言っておる?」
「今、解析します」
通信士が巧みに操作パネルを操る。 スクリーンに表示された、膨大な0と1の羅列。やがて、それらが意味のある言葉へと姿を変え始めた。

「ぎ…る…も…あ…は…か…せ…
お…た…ん…じ…ょ…う…び…
お…め…で…と…う…ご…ざ…い…ま…す」


 振り返った通信士はすっかり気の抜けた表情だった。
「今日は博士のお誕生日だったですね。 おめでとうございます」
「いや……そうじゃったかな……歳を取ると、物忘れが激しくてな、すっかり忘れておったよ」
「それにしても……イシュメールも博士も……全く同じことを考えていたんですね」
彼女はおかしそうに笑った。





「あら」
「どうした、003?」
「地球から通信だわ」
「なんだって! ゾアの手下が地球を攻撃してるのか?」
「ちょっと待って、変換するから……。えぇ…と、送り主はギルモア博士……内容は……………『フランソワーズ、お誕生日おめでとう』 ですって」
「そうか、…… 今日は君の誕生日だったのか…………」
「嫌だわ、ジョー、忘れていたの?」
心なしかフランソワーズの目が厳しいものに変わった。 ジョーはワザとらしく咳払いをし、仲間に助けを求めるように視線を泳がせた。
「いや、そ、そんなことはないさ。 もちろん、これからお祝いしようと思ってたし……(冷汗)  ほ、ほら、良い香りがしてきたよ! きっと張大人がご馳走を作ってくれたんだ!!」
 扉の向こうからは、009への助け舟が大皿を抱えてやってきた。
「はぁ~~い、 宇宙飯店のお食事アルネ~~」






※500天文単位という距離についてについて※
 地球から太陽系の果てまでが100天文単位といわれてるらしいので、彼らは太陽系を離れて航行中らしいです。 スターゲートを通らない段階でどのくらいの日数を費やしたのかは全く分かりませんが、 とにかく、とてつもなく遠いところに居るようです。
 そんなところから通信が地球へ届くのかとか、その逆は可能なのかとか、そういうツッコミは 多々あると思うんですが、 あんな流体力学、航空力学を完全無視した物体が10億光年先まで 旅することに比べれば、些細な誤差と思ってください・・・
 ついでに、あの映画においては、運航管理関係は003の担当だったんだと思いますが、あえて008を引っ張り出したのは私の趣味です。

ま、何はともあれ、お嬢さん、博士、お誕生日おめでとうございます。 
(2008.1.24)

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