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違いのわかる男の・・・(遥音2ヶ月 祈4ヶ月)  (遠雷(ささげモノ)Comments(0) )

3,4,9 周 クロウディア 遥音 祈<寝てるだけ
アルベルト&周の長男、遥音を囲んでの家族の団欒・・・なのか?
遥音はどうやら父親似らしいです。

























あかちゃんが2ヶ月になったら、少しずつおっぱい以外の味に慣れさせてあげましょう。
風呂上りや日光浴の後などに、果汁や野菜スープを飲ませてあげるといいでしょう。














ギルモア邸のリビングで 『おたまじゃくし倶楽部 10月号』 を読んでいたクロウディアが、
突然 うわぁっ! と歓喜の声をあげると、ソファーから跳ね上がりテーブルに バン!
と両手をついた。 さらに、正面の周に向かって鼻息荒く身をグッと乗り出すと、




「ね、周! 遥音に果汁 飲ませてもいいでしょ?」





驚くほど通る声がリビングに響いた。













違いのわかる男の・・・









目の前で琥珀色の瞳がキラキラ輝く。
表情ひとつ変えず、それを見つめる鈍色の瞳。

2人の温度差は端で見ていても手にとるようにわかる。 周の腕の中でご機嫌に「アー」
としゃべっていた遥音(2ヶ月)でさえも、ただならぬ気配にクロウディアの方へと顔を向けた。



「いらないわよ。母乳があるんだから、それで十分」 周は全く取り合おうとせず、右手をひらひらさせる。

「なんでぇ、いいでしょー! ずるいよ、いっつも周ばっかり遥音を独占して!」 提案を却下されたクロウディアは口を尖らせる。

「どうして果汁なんか 飲ませたくなったんだ、しかも唐突に?」 怪訝そうな声は周の隣に座るアルベルト。



第三者から見れば、他愛も無い家族の団欒。だが、面子が悪すぎる。24時間 臨戦態勢のこの一家
に、いつ何時 平和なリビングが壊滅状態にさせられるかもわからない。クロウディアはともかくも、
親のほうが心配だ。事態を見守るフランソワーズとジョーは手足を硬直させたまま、ごくりとツバを飲み込んだ。
が、クロウディアがそんな2人の緊張など構うはずもなく、ムキになって食い下がる。



「だって、この雑誌に 『他の味に慣れさせましょう』 って書いてあるし、」

並んで座る二人の目の前に 『おたまじゃくし倶楽部』を パシッ と広げる。

「遥音にもいろいろな味を教えてあげなきゃ!」

雑誌の記事を指差しながら、絶対に譲らないと確信した声に周は小さく息を吐いた。

「ジュースなんてものはね、わざわざ味なんか教えなくたってそのうち覚えるものよ。
それに、万が一ジュースが飲めなくても死ぬことはないし」

だから今は必要無い、と彼女の訴えを再び退けた周に、クロウディアの頬が焼餅のように
ぷうっと膨れた。



「周・・・・」

微妙な均衡をなるべく刺激しないようにと、フランソワーズがそっと口を挟む。3人の視線
が彼女へと注がれた。

「クロウディアは遥音のお世話をしたいのよ、ね♪ だから周、やらせてあげたら?」



予想さえしていなかった援護射撃に、クロウディアは琥珀色の瞳を一層大きく見開いて、ウンウンと頷く。



が、周の表情は一向に変わらない。



「ねーーー、おねがい!」今度はすがる様に拝み倒すものの、相変わらず返事は無い。

いつまでたっても収集が付かない無い話に、とうとうアルベルトの眉間にシワが1本、また1本と刻まれはじめた。
即ち、リビング壊滅 カウントダウン開始、である。



が、驚いたことに・・・・・・



「たまには奴に世話をさせるのもいいんじゃないか?
それにいざというときのために哺乳瓶から何か呑めるようにしておいほうがいいぞ」



今日はマシンガンをちらつかせることもなく、珍しくクロウディアの肩を持った。きっと明日は大雨だ。



「まぁ ―――」



そこまで言うんならいいんじゃない? 
と自分の意見にさしたる執着も見せず、周はあっけなく3人の意見に折れた。
その言葉を聞いて、クロウディアの膨らんでいた頬は一瞬にしてこぼれんばかりの笑顔
に変わる。うわぁぃと両手を上げて跳ねるように立ち上がると、いそいそとキッチンに
消えていった。

その姿を見送って、ジョーとフランソワーズもようやく安堵のため息を吐き出した。
優しいアルベルトに、妙に素直な周。明日はきっと暴風雨だ。洗濯物が乾かない、が、
このリビングが戦場と化すことを思えば、ノープロブレムである。












「ねぇ、フランソワーズ?哺乳瓶どこ?」

キッチンから甲高い声が響いてきた。

「右手の戸棚の真ん中辺りに消毒済みのものが置いてあるわ」

応じるフランソワーズの声も少しだけ高くなる。

「ちゃんと手を洗うのよ!」

周はソファの背もたれに寄りかかって頭を逆さまにし、背後のクロウディアへ声をかけ
る。

「わかってるってばぁ!布巾・・・布巾・・・ねぇ、フランソワーズぅ!」

「待ってて、今行くから」

フランソワーズがソファーから立ち上がり、キッチンへと向かう。

「ごめんね、疲れてるのに」周が詫びると、

「構わないわよ。あんなに楽しそうなクロウディア見るの久しぶりだし」

ウインクで応じた。



「こうやってみるとさ」

キッチンに消えていく妻の背中を見ながら、今まで黙っていたジョーがはじめて口を開いた。

「クロウディア 本当にうれしそうだよね」

彼の腕の中では祈(4ヶ月)がすやすやと眠っている。

「まぁ、ままごとの延長みたいなものだろうけどな」

アルベルトがさしたる関心を見せることもなく言う。

「抱っこさせても、危なっかしいのよ」

周が思わず苦笑いをこぼした。




「ねぇ、周!」 
再びキッチンからクロウディアの声。

「なあに?」

「何を飲ませたらいい?」

「何でもいいわ」

「じゃあ、桃!」

「桃はアレルギーになる可能性があるから、もう少し大きくなってからにして」
(注1)

「じゃあ、ミカンは?」

「酸味が強すぎるから、ダメ。それに便がゆるくなる」
(注2)


「じゃあ、何がいいの?」

「リンゴはないの?」

「ある!」

「じゃあ、それがいい」



「果汁ひとつ飲ませるのも、色々たいへんだな」呆れ顔のアルベルトに周が返す。

「まだひとつひとつの器官が未完成だから、食べ物も吟味してあげないとダメなのよ」



さすが、小児科医 周。歩く「家庭の医学」と呼んで差し上げたいです。

でも・・・・・あなたが妊娠中に服用していた「薬」に比べれば、
なに食べたって全然問題ないとは思いますがね・・・。





















一方、そのころキッチンでは――



「ねぇ、フランソワーズ」クロウディアがリンゴの皮を剥きながら口を開く。

「なに?」

「ジョーってさ、祈にメロメロ(死語)だよね」

「ま、まあね・・・」心なしかフランソワーズの声が震えた。

キッチンにシャリシャリとリンゴの皮を剥く音だけが響く。

「でさ・・・・」

「うん?」

「どうしてジョーは親指で祈の手のひらをこすってるの?」

クロウディアの手元からリンゴの皮がスルスルとその長さを伸ばしていく。

「あぁ、それね・・・」落胆したようなフランソワーズの声。「やっぱり、気になる?」

「うん。さっきからなにやってるんだろうなって・・・ずっと気になってた」



「だって、ずーっと、ずーーーっと、こすってるよ」

剥き終えたリンゴを左手に持って、フランソワーズを見上げた。



「あれはね・・・・祈の結婚線を消そうとしてるのよ」

「はぁ?」予想外の答えにクロウディアはポカンと口を開けた。

「だからぁ・・・ジョーはね、祈の掌にある、手相の結婚線を消してるのよ。『必要ない』
って言って」

「うっそぉ・・・、あり得ない」

「でしょう?」フランソワーズの声は明らかに脱力していた。

「ってことは?」引き出しからおろし金を出しながら、クロウディアは話を続ける。「まさ
か嫁に行かせない、ってこと?」

「それどころか、自分が将来結婚する気なのかも」

ほら、私たちって見かけが成長しないから。とフランソワーズはしゃれにならない一言を付け
加えた。

「それも、あり得ない」興味本位だったクロウディアの声も、徐々にトーンが下がる。

「祈も苦労するよね」ポツリと呟いた彼女の言葉は行き場を失い、リンゴをすりおろす音に
溶けていった。

「まぁ、そんな先のことを心配しても仕方がないし。今はとりあえず、元気に育ってくれれば
いいかなって」

フランソワーズが微笑む。がそれは明らかに「作り笑い」

「そう・・・だよね」

布巾からリンゴジュースを搾り出しながら、クロウディアも引きつった笑いを浮かべた。



















「お待たせーー。出来まちたよーーーー♪」

クロウディアが遥音の目の前に哺乳瓶をかざすと、遥音も見慣れぬ物体を不思議そうに見つめた。

「ね、抱かせてよ。私が飲ませたいの」

「わかった・・・じゃぁ 首だけ、気をつけてね」

まだ座っていない首をそっと腕で支えるようにして、遥音を周から受け取った。

「暖かぁい♪」満足そうにクロウディアが微笑むと、つられて遥音もニッコリと口元を緩める。

彼は少し尖らせるように口を開き、舌をもぞもぞと動かした。どうやら哺乳瓶を催促しているらしい。

そぉっと哺乳瓶をくわえさせると、クチュクチュと遥音がそれを勢いよく吸いはじめる。
が、次の瞬間、顔全体が ”この世の中で一番不味いものを口に入れました” の表情になり、
べぇと乳首を吐き出した。

「えぇ?飲まないの?」

クロウディアが再び乳首を口に押し当ててみたが、遥音の舌はそれを丁寧に押し返した。

「飲まないのか」

がっかりとした表情のクロウディアをアルベルトが覗き込む。腕には憮然とした表情の遥音。

「もしかして、それ、冷たくない?」

周が哺乳瓶を受け取って手で温度を測る。ひんやりとしたガラス特有の冷たさが伝わる。

「これじゃあ、飲まないわ。人肌に温めてあげないと」

「でも、ジュースって冷たい方がおいしいんじゃないの?」

「それは私たちの話。赤ちゃんは熱すぎても冷たすぎても飲まないのよ」

「そっかー じゃ、温めてくる♪」


数秒後、キッチンでチーンという音がすると、「できたよ」とクロウディアが戻ってきた。

「じゃあ、今度はちゃんと飲みまちょうね」

だが、遥音は2,3回吸ってみたものの、次の瞬間にはそれを迷惑そうに吐き出した。

「やっぱりだめだぁ・・・」

哺乳瓶を持ったまま、クロウディアが項垂れた。


「なぁ――」

「なに?」

「少しだけ熱いんじゃないか?」遥音の表情を見ながらアルベルトが言う。

「少しって」

「0.5℃くらいか?」

「なんでそんなに細かいのよ」

「男ってのはこだわる生き物だ」

「・・・・あり得ない」



いいから貸しなさいと、クロウディアから哺乳瓶を取り上げ、アルベルトの姿キッチンに消える。

程なく、戻ってきて、遥音に飲ませると、リアクションは今までと同じに見えた。が、



「ぬるいんだな」



今度は果汁を温めにキッチンへと向かう。

温めて飲ませて、冷やして飲ませて・・・・・そんなことを数回繰り返し、とうとう・・・・



「「「「「飲んだ!!!!」」」」



クロウディアの腕の中で、遥音は満足そうにリンゴジュースを飲み始めた。

「アルベルト、すごい!!」

今日だけはクロウディアの瞳が尊敬の色で染め上げられている。

「っていうか、この子のジュースは何度にしてあげればいいの?」と周。

「だいたい・・・・」アルベルトはあごに手を当てる。







「37.3度±0.2℃だな」 <ちっとも「だいたい」じゃないです。



「「「「はっ?」」」」



細かすぎます・・・・>お父さん



「あり得ない・・・」 クロウディアが呟く。



「あり得ないことはない。男ってのはこだわりが肝心だ。 こういうことにこだわる辺り、さすが俺の子だな」



アルベルトは哺乳瓶に食らい付く息子を満足そうに見つめた。

遥音は懸命にリンゴジュースを飲みながら、上目遣いにアルベルトを見上げると、少しだけ口角を上げた。














(注1)
作者が栄養士さんから直接教えてもらった話に付き、根拠なし。気になる方は最寄の栄養士さんまでお問い合わせください。


(注2)
作者が実母から直接教えてもらったのため、更に根拠なし。しかも、2ヶ月の子供の便は正常な状態でもやわらかいですね。<突っ込まれる前に自分で突っ込み









凛樹館のjuiさまのお許しを得て、遠雷育児系SS 第2弾です。



周が素直だったり、アルベルトが優しかったり、まぁ別人なんですがどうかお許しください。
<絶対零度ファンのみなさま



アルベルトは育児にはノータッチだろうなと思いつつ、妙なことに固執して、こだわり、満足する
タイプではないかと。それが、今回はリンゴジュースの温度であったわけです。





juiさま・・・・、
遥音くん、ジュースごときにこのこだわり。離乳食はかなり難航するものと思います。
変な設定作ってごめんなさい。




(03年10月1日juiさま宅へお嫁入り)

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