お題 6つの同音異義語(しかく)1.四角 (お題/
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俺はギルモア博士から手渡された四角い箱を開けてみた。
静電袋・・・中には制御基板 ―――― 俺は事の顛末を知り、大げさに溜息をついて見せた。
ジジイは、俺の苦悩など解す様子も無く嬉しそうだ。
「技術の進歩は早くてな、また新しいプロセッサーに変更じゃ」
やれやれ・・・今度のメンテナンスは長引きそうだ。
機械系のメンテはともかくも、制御系はとにかく面倒なのだ。
・基板の変更に伴う、すべての人工器官の設定と再接続
・通信環境の設定と確認
・人工器官のファームウエアの書き換えからイニシャライズ
―― 書き出したらキリが無い。 それでもこの辺は博士がやってくれることで、俺はただ寝てりゃいいだけだから、どうということは無い。
問題は起動処理が完了した後だ。
まず、すべての感覚についてキャリブレーション作業を行う。
目も耳も舌も・・・・・・・・・・・五感すべてを調整するのだ。
博士に言わせりゃ、俺が眠ってる間にも調整はするらしいが、実際の俺が違和感を感じるようでは話にならないので、この作業を無視するわけにはいかない。
それが終わると、今度は性能試験が待っている。
性能試験なんて、一言で言ってしまえば簡単だが、これが実に面倒な代物だ。
飛行試験だけに限っても、
・「単純に飛ぶ」といった、基本的性能試験(ま、仕様の確認だな)
・上空で急にエンジンを止め、その直後 再点火する・・など予期せぬ使い方をするイジワル試験
・空気の悪いところでの飛行など、劣悪環境下での試験
・水中活動時、操作ミスでジェット噴射をONしても、機能が働かないことの確認
・燃料がわずかになったとき、アラーム機能が動作するかといったエラー時の動作確認
それはもう、考えただけでもうんざりするような試験を繰り返し繰り返し行うのだ。
だが、面倒を理由にこれを怠ったら大変なことになる。
プログラムのバグなんてものは、普通に使った状態じゃなかなか現れてくれないものだ。 開発者が、「冗談じゃない、それだけは止めてくれ・・・」と思うような使い方をしたときに、100回に1回あるいはそれ以下の頻度で出てくるものがバグだ。 このバグをあぶりださないことには、安心して空も飛べない。 ましてこんな状態でミッションになんてことになったら生きた心地すらしねぇ。
つまりは、戦闘中に殺られたわけでもないのに強制終了、空からまっさかさまということさえありえる。
俺の3度目の溜息を聞いて、博士は慰めるように言う。
「いろいろ不具合を感じるところもあったろう? それが改善されるんじゃ」
確かに。 確かに俺は些細なこととは思いながら、博士にぼやいたことはあった。
・ジェット噴射を停止させてから次の動作へ移るのに、一呼吸おかないと動けないとか、
・加速装置に入る瞬間、世界がゆがむかと思うほどのめまいを感じるとか、
・地下室で受ける脳波通信の音が、ハウリングしているみたいだとか、
・イワンのテレパシーを受信した後、暫く脳波通信がつかえないとか、
なんといっても最初にプロトタイプになった俺は、旧仕様も旧仕様だし、バグも含めていろいろあるわけだ・・・
だが、些細な不具合とはそれなりに付き合ってきたし、折り合いもつけてきた。 前回のプロセッサー交換から3年、制御プログラムや機械の特徴も癖もつかんで、使いこなしてきたのも事実だ。 また新しい仲間を体の中に迎え、はじめましての挨拶から始めて、友達になり、時にはけんかして仲直りをし、そうやって分かり合える作業を一からやり直さなくてはならない。
もう一度だけ、博士に聞こえないように溜息をついた。
そんな俺の背後でジョーとフランソワーズのやり取りが聞こえた。
「えーーー。またパソコンのデスクトップ画面が変わってるよ」
「そうよ、今まではXPだったけど、今度はVISTAになったの」
「だってXPだって、ついこの間切り替わったばかりじゃない」
「ついこの間って、3年前よ」
「やっぱり、ついこの前だよ」
「何を言ってるの、ジョー、技術の進歩は早いのよ」
「・・・そうかなぁ」
「ジョーだってXPにいろいろ不満もあったでしょ? セキュリティが脆弱だとか周辺機器を接続するのがいまひとつやりにくいとか」
「そりゃ・・不満が無かったわけじゃないけど・・・・。でも僕だって使いづらいなりにも、いろいろ折り合いをつけて使いこなしてきたし、やっと慣れたところだったのに」
「ま、仕方ないのよ、いまどきXP使用のPCなんて売ってないもの・・・・」
「な、ギルモア博士?」
「なんじゃ、ジェット」
「もしかして・・・、俺、パソコンと同じ?」
(あとがき)
PCのOSが変わるたびに操作方法や設定にひどく悩まされます。 やっとなれて愛着もわきかけたころ、 新しいOSが発表され、否応無く交換させられるのには本当にうんざりです。 何とかならないものでしょうか・・・(溜息)
お題 6倍数の御題
1 四角 … 2とギルモア 後半で93 半端なお笑いモノ
その他のお題はこちら、
2 詩客 3 資格 4 刺客 5 死角 6 視覚
その他のお題はこちら、
2 詩客 3 資格 4 刺客 5 死角 6 視覚
俺はギルモア博士から手渡された四角い箱を開けてみた。
静電袋・・・中には制御基板 ―――― 俺は事の顛末を知り、大げさに溜息をついて見せた。
ジジイは、俺の苦悩など解す様子も無く嬉しそうだ。
「技術の進歩は早くてな、また新しいプロセッサーに変更じゃ」
やれやれ・・・今度のメンテナンスは長引きそうだ。
機械系のメンテはともかくも、制御系はとにかく面倒なのだ。
・基板の変更に伴う、すべての人工器官の設定と再接続
・通信環境の設定と確認
・人工器官のファームウエアの書き換えからイニシャライズ
―― 書き出したらキリが無い。 それでもこの辺は博士がやってくれることで、俺はただ寝てりゃいいだけだから、どうということは無い。
問題は起動処理が完了した後だ。
まず、すべての感覚についてキャリブレーション作業を行う。
目も耳も舌も・・・・・・・・・・・五感すべてを調整するのだ。
博士に言わせりゃ、俺が眠ってる間にも調整はするらしいが、実際の俺が違和感を感じるようでは話にならないので、この作業を無視するわけにはいかない。
それが終わると、今度は性能試験が待っている。
性能試験なんて、一言で言ってしまえば簡単だが、これが実に面倒な代物だ。
飛行試験だけに限っても、
・「単純に飛ぶ」といった、基本的性能試験(ま、仕様の確認だな)
・上空で急にエンジンを止め、その直後 再点火する・・など予期せぬ使い方をするイジワル試験
・空気の悪いところでの飛行など、劣悪環境下での試験
・水中活動時、操作ミスでジェット噴射をONしても、機能が働かないことの確認
・燃料がわずかになったとき、アラーム機能が動作するかといったエラー時の動作確認
それはもう、考えただけでもうんざりするような試験を繰り返し繰り返し行うのだ。
だが、面倒を理由にこれを怠ったら大変なことになる。
プログラムのバグなんてものは、普通に使った状態じゃなかなか現れてくれないものだ。 開発者が、「冗談じゃない、それだけは止めてくれ・・・」と思うような使い方をしたときに、100回に1回あるいはそれ以下の頻度で出てくるものがバグだ。 このバグをあぶりださないことには、安心して空も飛べない。 ましてこんな状態でミッションになんてことになったら生きた心地すらしねぇ。
つまりは、戦闘中に殺られたわけでもないのに強制終了、空からまっさかさまということさえありえる。
俺の3度目の溜息を聞いて、博士は慰めるように言う。
「いろいろ不具合を感じるところもあったろう? それが改善されるんじゃ」
確かに。 確かに俺は些細なこととは思いながら、博士にぼやいたことはあった。
・ジェット噴射を停止させてから次の動作へ移るのに、一呼吸おかないと動けないとか、
・加速装置に入る瞬間、世界がゆがむかと思うほどのめまいを感じるとか、
・地下室で受ける脳波通信の音が、ハウリングしているみたいだとか、
・イワンのテレパシーを受信した後、暫く脳波通信がつかえないとか、
なんといっても最初にプロトタイプになった俺は、旧仕様も旧仕様だし、バグも含めていろいろあるわけだ・・・
だが、些細な不具合とはそれなりに付き合ってきたし、折り合いもつけてきた。 前回のプロセッサー交換から3年、制御プログラムや機械の特徴も癖もつかんで、使いこなしてきたのも事実だ。 また新しい仲間を体の中に迎え、はじめましての挨拶から始めて、友達になり、時にはけんかして仲直りをし、そうやって分かり合える作業を一からやり直さなくてはならない。
もう一度だけ、博士に聞こえないように溜息をついた。
そんな俺の背後でジョーとフランソワーズのやり取りが聞こえた。
「えーーー。またパソコンのデスクトップ画面が変わってるよ」
「そうよ、今まではXPだったけど、今度はVISTAになったの」
「だってXPだって、ついこの間切り替わったばかりじゃない」
「ついこの間って、3年前よ」
「やっぱり、ついこの前だよ」
「何を言ってるの、ジョー、技術の進歩は早いのよ」
「・・・そうかなぁ」
「ジョーだってXPにいろいろ不満もあったでしょ? セキュリティが脆弱だとか周辺機器を接続するのがいまひとつやりにくいとか」
「そりゃ・・不満が無かったわけじゃないけど・・・・。でも僕だって使いづらいなりにも、いろいろ折り合いをつけて使いこなしてきたし、やっと慣れたところだったのに」
「ま、仕方ないのよ、いまどきXP使用のPCなんて売ってないもの・・・・」
「な、ギルモア博士?」
「なんじゃ、ジェット」
「もしかして・・・、俺、パソコンと同じ?」
(あとがき)
PCのOSが変わるたびに操作方法や設定にひどく悩まされます。 やっとなれて愛着もわきかけたころ、 新しいOSが発表され、否応無く交換させられるのには本当にうんざりです。 何とかならないものでしょうか・・・(溜息)
お題 6倍数の御題
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