忍者ブログ         
[PR]  (/ )

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


どんなことにも理由(わけ)がある~鼻編~ 1/3  (お笑いComments(0) )

2,3,4,8,9 後半でギルモア、イワン。
ピュンマが思わぬ事件に巻き込まれます。
ナンバーさんの黒さ爆発、ジョーが天然なのはお約束。
タイトル「理由(わけ)」の意味するものは?
事件編 解説編 対策編の3部作です。




― 今日の関東地方は朝から冷え込みがきつく、この冬一番の寒さになりました。
空気が乾燥していますので火の元には十分お気をつけください ―



「今日、乾燥するんだ・・・」
テレビを見ていたジョーの表情が少しだけ曇る。
「ムシムシするよりずっといいよ。風が強いのは寒いけどね。でもそれだって 僕達にとっては気になるほどのものじゃないだろう? それに乾燥すると洗濯物の 乾きが良くていいじゃないか」
読んでいた新聞を膝の上に降ろすとピュンマはにこやかな顔を彼に向けた。その表情はジョーのそれとは 対照的に一転の曇りも無く、今日の天気と同じくらいに晴れやかで・・・。
そう、自分たちには「乾燥」など関係の無いこと・・・のはずだったが。





実はそれが落とし穴だった・・・・。







どんなことにも理由(わけ)がある ―事件編―







「ねぇジョー、聞いて!」

お昼はバーベキューにしようと、ギルモア邸前の砂浜で準備をしていたジョーの元に フランソワーズが怒りをあらわにして近づいてきた。エメラルドグリーンの瞳も綺麗に弧を 描く眉もきつく釣りあがっている。いくら鈍い彼であっても彼女が相当に怒っていることは すぐに理解できた。そしてこんなときの彼女に彼が説教される確率は45%。

「どうかしたの?」

素っ気無く答える。彼女がこんな風に近づいてきたときは、この答え方が一番いい。間違っても動揺して 要らぬことを口走ってはいけないのだ。あくまでも素っ気無く、素っ気無く・・・。 しかし、その声が少しだけ震えていたのは寒さのせいかはたまた彼女の迫力に気圧されてのことか。  一方、彼女は彼の不安など構うこと無くグイッと顔を近づけた。

「ジェットったらまた防護服を着ないで買い物に行っちゃったのよ!」
「買い物って・・・まさか空を飛んでいったの?」

真顔に戻ったジョーの語気が少しだけ強くなった。

「そうよ、行き先は『ニコニコマート』。だからてっきり歩いていくかと思ったのに・・」
「信じられない!!」

温和なジョーの声に怒りが混ざり、右手に掴んでいた薪は音も無く粉々に砕けた。

「ジェットはねこの前の一件で博士にこっぴどく叱られたのよ。私服では飛ぶなって。なのに・・・」

彼女が悔しそうに唇をかみ締める。きっと彼が飛ぶのを必至で止めようとしたに違いない。 彼女にかけてやる適当な言葉もなく、2人の間に沈黙だけが流れる。ジョーが不安そうに空を見上げると、 つられてフランソワーズも空を仰いだ。冬空は抜けるように青く、頬に当たる風はつき刺すように冷た かった。

「そういえば、今日って乾燥注意報が出てたよね・・・」

脈絡無く発せられたジョーの言葉は強く吹きつけた北風に掻き消されていった。










「一体、何の騒ぎだ?」

鉄板を持って出てきたアルベルトの声に2人がはたと我に返る。

「聞いてよ、アルベルト」

声をそろえて2人は左右からアルベルトに迫った。子供達の勢いにさすがの彼も一瞬怯む。

「ど、どうしたんだ」
「ジェットがさ・・・」ジョーが右腕を掴めば、
「また私服のままで空を飛んでいったのよ」フランは左袖をひっぱる。
「なんだって、今日の奴の服装は?」
「赤いジャンパーだった」
「そうだったな・・・あまり好ましくないな。それと靴は何を履いていったんだ?」
「えぇっとね・・・確か、デッキシューズだったわ」
「デッキシューズって・・・ゴム底の?」
「そう」
「最悪の組み合わせじゃないか。あのバカ・・・・」

アルベルトが吐き捨てるように呟く。苦虫を噛み潰した表情で空を見やるが、 すでに赤毛の男の姿があろうはずもない。

「・・・で、奴はどこまで買出しに行ったんだ?」
「『ニコニコマート』まで。 焼肉用のお肉を頼んだのよ」

フランソワーズの言葉にアルベルトがほっと溜息を漏らした。

「近場か・・だったらそれほどの被害は出ないだろうが・・・。 それにしてもフランソワーズ、君がついていながら奴が飛ぶのを止められなかったのか?」
「止めることは止めたんだけど・・・」

彼女は身振り手振りでその時の様子を話しはじめた。


「お金はこれね。牛肉1kgよ。たまにしか来ないピュンマが居るんだから 美味しいお肉を買ってきてね」
「了解、まっかしとけって!」

ジェットがお金を受け取った瞬間、踵から赤い炎が勢い良く噴出し、彼は3mの高さまで飛び上がった。

「ちょっと、ジェット。わかってるでしょ?そんな格好じゃ危ないのよ!」
フランソワーズが口に手を当てて叫んだが、

「平気、平気。直ぐそこまでだから、じゃあなぁ」

彼は軽く手を上げると更に高度を上げ、噴射を増すと一気に街の方へを消えて行ってしまった。
   
耳障りな噴射音が聞こえなくなると、辺りはしんと静まり返り、小鳥の声が心地よくあたりに響いていた。 空には彼が残した飛行機雲が2本、綺麗に伸びていた。




「じゃあ、アイツはわかっていて飛んでいったのか」
「っていうか、そうやって私たちの反応を楽しんでいるようにも見えるのよ」
「冗談じゃないよ! 犠牲になる僕たちの身にもなってもらわないと!」

フランソワーズとジョーが彼への不満が無節操にしゃべり始めると、その場は一気に愚痴大会の 様相を呈し始めたが、

「待て!」

アルベルトの威圧的な響きに2人は口を閉ざす。

「とにかく今は誰が奴から買い物袋を受け取るかを決めるべきじゃないのか?」
アルベルトは2人を交互に見据える。2人は最も触れたくなかった話題がアルベルトの口から 発せられたことにいささかの動揺をみせた。

「ぼ・・・僕は先週被害に遭ったし」
   ジョーは明らかに逃げ腰で、
「私だって一昨日やられたのよ」
   フランソワーズは最も最近の被害者であることを殊更強調した。
「俺もここに来てすぐに被害にあった」
   だからと言ってアルベルトが子供たちの変わりに犠牲になる気もさらさら無いらしい。

じゃんけんか阿弥陀くじか・・・3人が微妙な緊張感で互いを見詰め合っていたその時、背後から馴染みのある 呑気な声がした。

「みんな集まって何の相談?」

3人が声の方を一斉に振り返る。そこには「全部切ったよ」と野菜がたっぷり入った水切りカゴを 頭の高さまで掲げたピュンマ。瞬間、彼ら3人の表情が不気味に崩れた。

<<ピュンマはまだ被害に遭ってないわ>>
<<それに多分ジェットのアレは知らないと思う。>>
<<いいか、悟られるなよ。 今回の犠牲はアイツになってもらおう。>>
<<意義無し>>

相談がまとまるのに10秒とかからなかった。さすが咄嗟の判断が生死を分ける数多の戦いを乗り越えた ゼロゼロナンバーであると言えよう。




「や、やぁ、ピュンマ。ずいぶん野菜を切るのが速かったね」

不自然な笑みを満面にたたえたジョーが口を開く。脈絡のない話にピュンマも怪訝そうに眉をひそめた。

「そう?早いとは思わないけど・・それより一体何の相・・・」
「あら~~ピュンマ、ありがとう!!!助かったわぁ♪」

『一体何の相談をしていたんだ?』というピュンマの質問は、フランソワーズのあまりにも 大袈裟で演技がかった言葉に遮られた。

「あのな、ピュンマ――」

ここでアルベルトが間髪置かずに畳み掛ける。

「すまんがここでバーベキューの準備をしていて欲しいんだが」
「いいけど・・・、でも僕はこれからタレの準備をしないといけないんだ」

大人から焼肉のタレ作りを言い渡されているらしい。

「いいわ、タレはアタシが作るわ。レシピも知ってるから大丈夫。それにね、実はジョーが 少しおなかが痛いんですって。だから部屋で休んでいてもらおうと思って」

アタシが看病しなくって誰が看病するのと言いたげな瞳。
しかし、当の腹痛と言われた本人は、

「僕は別におなかなんて痛くな・・・」

即座に反論しようとした次の瞬間、背中に冷たい鉄塊の嫌な感触を感じた。
グイッと強く押し付けられると、それがマシンガンの発射口だと理解して、 さすがのジョーも口を噤む。

「そうか、そうか、ジョーはおなかが痛いのか。ならソファーで横にでもなっていた方がいい。 実は俺の部屋に神聖ローマ帝国時代から伝わる、秘伝の胃腸薬があるんだが、それを試してみるといい。 サイボーグにもなかなか効果があるらしいぞ」

やけに饒舌にしゃべると、そのままの姿勢でジョーの背中をグイグイ押して家のほうへと向かう。

「腹痛かい? それは大変だ。 バーベキューが始まるまでに良くなっているといいね。  いいよ、ここは僕がやっておくからさ。 じゃあフランソワーズ、タレはお願いするよ」

彼らの態度の不自然さを疑っていたピュンマも所詮はお人好しなのだ。

「そうだ!」

ドアの前でアルベルトはわざとらしく足を止めた。

「実はさっきジェットが買い物に行ったんだ。 すまんが奴から買い物の荷物を受け取ってくれないか?」
「荷物? かまわないよ」

にこりと微笑んでピュンマは答えた。その瞬間3人に薄暗い笑みが浮かんだ。













30分後、バーベキューのセッティングをするピュンマのところにジェットが戻ってきた。
着地の風圧で辺りの道具がバタバタと倒れる。

「わりぃ」
「・・・いいよ、後で直しておくから」
「あれっ?ジョーとフランソワーズは?」

ジェットはここに居るはずの2人をキョロキョロ捜す。

「ジョーがさ、おなかが痛いんだってさ。アルベルトに胃腸薬を貰って休んでいると思うよ」
「ハライタか? アイツ何か悪いものでも食べたのか?」

ケケケとジェットが笑う。

「さあね・・・。そういえば顔色はそれほど悪くなかったと思うけど・・・」

ピュンマも首を捻る。






一方、リビングでは3人が不安気に、しかし興味津々で浜辺の様子 をうかがっていた。ジェットとピュンマの会話はフランソワーズが聞き、 その音声を残りの2人に脳波通信で伝えるのはミッション通り。

「・・・ニコニコマートに行った割には時間が掛かったわね」

時計を見ながらフランソワーズが小首をかしげる。出かけてから1時間、いつもだったら20分で 戻ってくるというのに。

「それに・・・袋もニコニコマートのものじゃないよ」

ジョーが指さす先は行きつけのスーパーのものとは違う買い物袋。

「アイツ・・・どこまで行ってきたんだ?」

アルベルトは眉をひそめた。






「そうだ、買い物に行ってきたんだろう?」ピュンマが思い出したように尋ねる。
「おぅ、せっかくだから神戸まで行って特上の松坂牛を買ってきたぜ!」
「神戸まで?こんな時、空を飛べるのは便利だね・・・」
「まあな」誇らしげに鼻を長く高くするジェット。
「疲れたろう?その荷物、預かるよ。少し休むといいさ」

そう言うと、ピュンマの右手はジェットが持つ荷物へと伸びる。






「神戸か・・・やっかいだな」アルベルトが呟く。
「ねぇ・・・」

何をか考え始めたアルベルトにフランソワーズが声をかける。

「さっきから変な音がするんだけど?」
「音?」アルベルトの眉がつりあがる。
「シューって言う音・・まるでガスが漏れるみたいな・・・」

フランソワーズは耳に手を当て、表情を固くした。

「あ、ピュンマったらプロパンガスを持ってきてるよ。」

ジョーの指差した先には、プロパンガス。アルベルトの表情が一瞬して変わる。

「ジョー、奴を止めろ!たいへんなことになるぞ!!」
「大変って?」
「説明してる暇はない! とにかく最悪はこの家が吹っ飛ぶ!」
「どうして?」栗色の瞳を殊更丸くして尋ねる。
「あぁ、もうっ!」アルベルトはイライラと髪を掻き毟った。
「ピュンマ ダメよ! その袋を受け取っては!!!」

押し問答をするアルベルトとジョーに構わずフランソワーズがあらん限りの声を張り上げた。
が、次の瞬間・・・・・・



バリバリバリリリリッッッッーーー


空気を引き裂くような音が鳴り響いた瞬間、ジェットとピュンマの間に青い閃光が走った。 次の瞬間、爆音ととも火柱が空へ突き刺さるように駆け上がる。 爆風は一瞬にして辺りのものを吹き飛ばし、さらに開いた窓から 3人が居るリビングの中へも押し寄せた。メモ紙や本、ありとあらゆるものを 舞い上がり、それはまるで季節外れの桜吹雪のようでもあった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!」


ほんの一瞬遅れてピュンマの絶叫が海岸に響いた。







数秒後、今の出来事が嘘のように辺りは静まり返り、のどかな鳥の鳴き声がどこからともなく聞こえてきた。 爆風の中心で呆然と立ち尽くすジェット。顔も髪も煤で黒く汚れている。

「ピュンマ!」

ギルモア邸から3人が慌てて飛び出してくるとジェットも我に返り続いた。4人が向かったその先には、 閃光の衝撃と爆風で吹き飛ばされたピュンマがぐったり横たわったまま意識を失っていた。


Next>
PR

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<どんなことにも理由(わけ)がある~鼻編~ 2/3 | HOME | トリビア・3>>
忍者ブログ[PR]