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戦い終わって  (お笑いComments(0) )

4と8、最後にイワン(しかも怒りモード)
キリバンニアピンでE田さまにリクエストいただきました
お題は「某天然少年を肴に酒を飲む4と8」
長期ミッションが終了し、4と8が戦いを総括します。
ピュンマを策士っぽくしようとしたらとんでもない悪人に!
どえらく美人で魅力的なレイコという女性が登場します。
93派の方、本当にごめんなさい<読まないほうがいいかも・・・






 どこまでも静かな夜だった。




 森の中、ピュンマはひとり歩いていた。枯葉を踏みしめる音、それ以外何もない静寂の中を独り歩いていた。
 風が吹いた。年老いた木々は面倒くさそうに緩慢に揺れた。 遅れて木の葉のざわめく音が響いた。それはありとあらゆる方向から、まるで彼を覆い尽くすかのように響いた。
 彼はふと自分が進んでいる方角が正しいのか不安になった。立ち止まり空を見上げた。 だが森の最下層に居る彼が目にしたものは途方も無く背の高い木々だけだった。月明りさえ見ることは叶わなかった。
 このとき初めて彼は言い知れぬ孤独を感じた。



 数分後、彼は湖に達した。
 湖は鏡のような静けさを湛え、三日月の光が湖面を滑らかにすべっていた。
 ここもまた静けさだけが支配する空間だった。
 森を根城とするすべての動物、小さな昆虫に至るまであらゆる生き物が姿を消し、気配すら感じることが出来なかった。 あまりにも奇妙だ、と彼は首をかしげた。だがすぐにそれは愚問だと気付き小さく苦笑した。 昼間この近くで激しい戦闘があったばかりだ、生き物が居る方がおかしい。
 彼は湖を見渡せる場所に腰を降ろし、スキットル(ウイスキーなどを入れる薄型の水筒)の蓋を捻った。 細い口から湯気が立ち上り、ホットウイスキーの芳香が溢れ出した。まだ戦闘の余韻で高ぶる神経を静めるために一口煽った。 濃いアルコールに舌が痺れ、胃がカッと熱くなった。
 不自然な静寂の中、闇に沈んだ木々の向こうに黒い煙が細く静かにたなびいていた。
 つい数時間前あの場所に自分が居たこと、そこで激しい戦闘を繰り広げたこと、 今となってはそれらすべてが夢のようにも思えた。だが辺りに澱む焦げ臭い異臭、敵を殴りつけた感触、生温かい血の臭い、 無我夢中だったすべての出来事が時間を追うごとに実感として戦いを蘇らせた。



 せめてあの煙が無事に天に昇り、2度と地上に降りてこないように・・・



 彼のできることは祈ることだけだった。



 強い風が吹き抜け、彼の身体は容赦なく寒さに曝された。西の空を黒い雲が覆っていた。雪が降るのかもしれない。彼はブルリと身体を震わせ何か羽織ってこなかったことを酷く後悔した。 かき集めてきた小枝に火をつけ焚き火にした。赤々とした炎を見ていたら、この世にたった一人残されたんじゃないかという不安はほんの少しだけ和らいだ。



 
カサッ・・




 背後に気配を感じた刹那、後頭部に固い銃口が押し当てられた。しかし彼は振り返ることさえしなかった。
「冗談にしてはきついんじゃないか、004」
「冗談?フン、俺が敵だったら今ごろお前さんの命は無いぞ」
 表情も変えずにアルベルトが応じた。彼の油断を責めるような口ぶりに、しかしピュンマは苦笑を漏らす。
「敵じゃないのはわかってたさ。殺気を全く感じなかったし・・・大体、敵だったら足音を消す工夫くらいするだろう?」
「なるほど」
 アルベルトは口角をほんの少し上げた。ピュンマも僅かに口元を歪め、手元のスキットルを彼に投げようとした。 だがアルベルトは右手でそれを制す。怪訝顔のピュンマにアルベルトは持ってきたスキットルを見せてニヤリと笑った。
「用意がいいね」
「お互いにな」
 アルベルトは足元に横たわる倒木の上に腰を降ろした。
「せっかくの祝杯なのに、抜け出してきたのかい?」
「お前さんに言われる筋合いは無い。第一、あれを祝杯、とは言わんだろう」

 半年近くに及んだミッションが終り、ドルフィン号では互いの無事を祝うささやかな宴が開かれていた。 それを早々抜け出したのがピュンマ、その後を追ったのがアルベルトだった。 アルベルトの言葉にピュンマの顔色が曇る。

「フラン、荒れているのかい?」
「いや、荒れてくれればいいがな。むしろその逆で静かなもんだ。フランは手酌でワインを延々呷ってる。」
「ジョーは?」
 彼女が荒れる原因になった仲間の名前を挙げた。だが彼に気の利いた言い訳を期待しても無理だろう。
「奴は困り果てて彼女を見ているだけだ。いつも通りといえばそうなんだがな」
 薄笑いを浮かべた。
「他のみんなは」
「2人を遠巻きに見ているだけだ。声か?掛けられるわけが無いだろう。言ってみりゃ通夜みたいなもんだ」
「そうか・・・やっぱりそうなるよな・・・・」
 ピュンマは嘆息し、続けた。
「確かにレイコは魅力的だった。ジョーでなくても心が動く」
 ピュンマの言葉にアルベルトは黙って頷き、会話はそこで途絶えた。 刃物のような寒さが身体に突き刺さる。 湖の上で瞬く星は寒空の下で行き場所も無く凍えて酒を飲む自分達を嘲笑っているのだろうか。



 それにしても、と静寂を破ったのはアルベルトだった。
「今回の作戦は見事だったな」



 半年前のことになる。彼らのもとにブラックゴーストの資金源となっている基地があるらしいとの情報が舞い込んできた。 規模から考えても苦戦を強いられることは確実で、以来5ヶ月、攻撃の突破口を掴もうと基地に関するあらゆる情報をかき集めた。
 ゲリラ戦法のミッションを開始したのが1ヶ月前。敵の通信に入り込み、あるいは007が敵兵に化け、偽の情報を流し、敵の情報網を撹乱させた。
 総攻撃の直前には002と009が敵地に潜入し、加速装置を駆使して広大な基地内部の随所で小規模な戦闘を繰り返した。 敵兵の統率が完全に崩れたその時を狙って001を除いた全員が突入し、僅か2時間で基地を壊滅させることに成功した。
 たった9人での奇跡的勝利、だった。



「お前さんの作戦が無ければ多分・・・俺達は全滅していた」
 ねぎらうアルベルトの言葉にすかさずピュンマはかぶりを振る。
「すべては定石通りの作戦。誉められるようなことは何も無い。 むしろ、レイコが教えてくれた基地の構造や敵の戦力、これがあったから楽な作戦が立てられただけで・・・」
「だから――」
 そうじゃないと言わんばかりにアルベルトが言葉を遮る。ピュンマは怪訝な顔を向けた。
「見事だったのはレイコを寝返らせたお前さんの手腕だ」
 ニヤリと笑うアルベルトにピュンマは戸惑いを見せた。
「何を言ってるんだい? レイコはジョーの優しさに心打たれてボクらを信じるようになったんだ。僕は何もしていない」
「違うな、お前さんは最初からレイコが敵のスパイだと知っていた。 それを承知の上でジョーがレイコを庇うのを許していた。 つまり、お前さんはレイコを寝返らせる自信があった、違うか?」
 アルベルトの断定的な言葉にピュンマは苦笑し天を仰いだ。
「参ったな・・・最初から全部お見通しかい?」
「いや、それに気付いたのは最近だが」
「確かに―――」
 ピュンマは再びウイスキーを呷った。
「確かに君の言う通り、レイコがスパイだってのはわかってたよ。どう考えてもレイコが助けを求めてきた状況はおかしすぎた。だろ?」










1ヶ月前・・・

 敵地近くに潜んだ彼らは、毎夜闇にまぎれて基地の偵察を行った。 そしてその夜は009、003組が基地の裏手を探っていた。
 深夜を少し回った頃、換気口の辺りで何かの影が動いた。 その場所は月明かりから遮られ、009の目にはそれが何かはわからなかった。
「人よ・・・女性だわ」003が囁く。
「敵かい?」009の問いかけに003はわからないと首を横に振った。
 尾行することで話が纏まり追跡を始めた瞬間、気配に気付いた鳥たちが一斉に羽ばたいた。 驚いた女は振り返り、月明かりに曝された009と目が合った。と同時に女は彼らに走り寄ってきた。
「お願いです、助けてください」
「君は?」
「今、詳しくは説明している暇はありません。でも、助けて欲しいんです。あの基地には50人の科学者が囚われているんです。 そして私もその1人」
「「50人!」」
 予想外の人数に2人は絶句した。
「見張りの目をごまかして脱出してきたんですが、残された仲間を助けたいんです。 どうか手助けをしてください」
「・・・・」
「おねがいします!」
 訴える彼女の瞳は嘘をついているように見えなかった、と後に009は語った。
 とにかく2人は彼女をドルフィン号に連れ帰ったのである。










「変だろう。レイコは命がけで脱走して来たんだ。最初に見た人間を「味方」って思うだろうか? ボクだったら間違いなく「敵」と思う」
「その話は俺も変だと思った」
「しかも50人もの科学者といったら大半が男。 その中で女性のレイコが居なくなれば敵の看守がどんなに間抜けでもその事実に気付くはずさ。 最悪なら皆殺しの憂き目に遭う。万が一誰かを脱出させるにしても・・・女を選ぶとは思えない」
「それでレイコは”敵の罠”だと察した」
「そう。罠・・・だが、逆手にとればこんなチャンスは滅多に無い。 あの巨大基地を破壊するなんて常套手段ではとても無理だ。 作戦を立てるためには基地の図面や敵の戦力がどうしても必要だった。 その時、それを知ってる人間がわざわざ向こうからやってきたんだよ。 これをチャンスといわずしてなんと言う?」
「すべては彼女の寝返りが成功すればの話だ」
 呆れた声でアルベルトは返す。博打にしても分が悪い。
「そう、レイコをうまく寝返らせるのが今回のミッションの鍵だった」
 ピュンマは足元の小枝を焚き火に放った。パチリと生木の割れる音がして、一瞬炎が大きくなった。 彼は炎を見つめたまま続けた。
「009が彼女を連れて来た時、危険すぎるという理由で君と002、6、7は反対したよね。 003と005は何も言わなかった。だけど彼らが意見しないってことは「事実上の反対」だ。 状況から考えて彼女は疑われて当然だったしね。もっとも003には反対する別の理由があったかもしれないけど」
「で、お前さんはどちらの側にもつかなかった」
 アルベルトの指摘にピュンマが静かに頷いた。
「あの場面でボクも反対すれば、間違いなくレイコをドルフィン号に乗船させないことに決まっただろう。 仲間の安全のためにはそれが一番だからね。だけど・・・それじゃあ敵の情報を入手する目的が叶わない。 だからボクは反対しなかった。
 だけどね、賛成するわけにもいかなかったんだ。 レイコに対する扱いでは009を孤立させる必要があったからね」
「009を・・・・孤立させる?」
 アルベルトの眉間にシワが寄る。ピュンマの言葉の意味を図りかねているようだ。
「あぁ。普段の彼は優柔不断だけど、信じたことに対しては頑固だからね。 全員で感情的に「危険だから」と反対すれば意固地になるのは見えていた」
「すると?」
「当然、レイコは009のそばに居ることになる。009の人並みはずれた優しさと甘いマスク・・・ ボクらが彼女に冷たくすればするほどレイコは009をだけを頼る。心を開いてくれればこちらのものさ」
「スパイでもか?」
「そう単純でもないけどね」
 自嘲気味に笑うピュンマの表情にアルベルトは疑惑の念を抱いた。
「種明かしがありそうだな」
 アルベルトの責めるような口調にピュンマは観念し白状する。
「モングランで出かけて敵地の近くを偵察したことがあったろう?」
「ああ。確かあの時レイコがこちらの動きを敵に伝えて・・・・それで戦闘になった」
「あの攻撃はレイコの密告だってみんな思ってたんだろうけど、実は・・・・」
「実は?」
「ボクがモングランのステルス処理を数分間解除させてワザと敵をおびき寄せたんだ」
 場合によっては裏切りとも取られかねないピュンマの行動にアルベルトの表情は更に厳しいものへと変わった。語気が強くなる。
「何故だ」
「見張り部隊だけだったから・・・一瞬で全滅できると踏んだんだ。密告で敵が攻撃してくるんだったらあの程度じゃ済まないよ」
「危ない真似を」
 大袈裟に溜息をつくアルベルトに構わずピュンマは続けた。
「戦闘になったおかげでレイコを戦闘に巻き込むことが出来た。 当然009は戦いながらも彼女を必至に守る。 009にそこまでされて心が動かないはずがないだろう。 しかもその後ドルフィン号では自分は身に覚えの無い密告者として責められた。僕たち全員の厳しい詰問の中、009はひとり、彼女を庇ったんだ」
 レイコが涙ながらに自分の身分を明かし、その上で彼らに協力すると言ったのはその直後だった。










「ごめんなさい009。アタシは皆さんのおっしゃるとおりブラックゴーストのスパイです。 でも・・・・もう我慢できない。貴方に嘘をつくのはこれ以上出来ない ―――― アタシの知っていることすべてをお話します」
 そう言ったレイコは基地の構造、戦力、動力源・・・基地に関する情報すべてを提供した。










「はぁ・・・」
 目眩と頭痛を覚え、アルベルトは額に掌を押し当てて溜息をついた。
「たいした策士だ・・・俺はお前を敵にしなくて良かったと思うよ、つくづく」
 アルベルトは気持ちを鎮めようとタバコに火をつけた。 煙を大きく吸い込み、ゆっくりと吐き出す。無言のまま1本吸い終えた後、ゆっくりとピュンマのほうへと顔を向けた。
「もうひとつだけ聞きたいことがあったんだ・・・聞いても構わないか。というよりこれ以上俺を混乱させるような話は出てくるか」
「多分もう無いよ ――― もっとも話の種類によるけどね」
 ニヤニヤ笑うピュンマにアルベルトは意を決して口を開いた。
「総攻撃の日を001が目覚める1日前に設定したことだ」
「それが?」
「奴が起きるのが3日も4日も先だったら001抜きの攻撃も仕方が無いと思うがな・・・ だがたった1日だ。総攻撃の日を延期したほうが良かったんじゃないのか?」
「あぁ、そのことか」
 ピュンマが納得したように頷く。
「001抜きでも勝ちは間違いないと思ったからってのもあるけど・・・万が一計画がうまく進まなかった場合を想定したんだ。 つまり総攻撃から1日たって誰も戻らなかったら、それはつまりボク達が危機的状況に陥っていることを意味する。 総攻撃にイワンを参加させれば、そのときに能力を消耗させてしまって肝心なときに使えなくなる、 戦いの消耗は激しいからね。だから本当に助けが必要なときに起きてもらおうと」
「なるほどね・・・そこまで考えてのことか」
「いや・・・本当はもうひとつあってね・・・」
「?」






≪オハヨウ≫


不機嫌なテレパシーが響く。


「おや、ネボスケ王子のお目覚めか」


アルベルトが揶揄する。


≪ズルイヨ、僕ダケ 仲間ハズレニシテ≫


「そんなことないさ、君には君にしかできない取っておきのミッションを用意しておいたからさ」


「ピュンマ・・・イワンにしか出来ないミッションってのは何だ?」


≪・・・・・(怒)≫


「イワンはもうわかってるみたいだけど・・・」











「ヤケ酒を呷っているお嬢さんのご機嫌を直して欲しいんだ」










(fin)






あとがき

キリバンでE田さまからリクエストいただきました


「某天然少年を肴に酒を飲むピュンマとアルベルト」

しかもピュンマを存分に語らせてもOK!だなんて夢のようなリクエストを いただき、


「ピュンマが語るんだったら、やっぱミッションの総括よね~~~♪」


ノリノリで策士ピュンマを書いていたら、書いていたら、書いていたら・・・・・



ブラック通り越して、悪人に・・・(汗)



ジョーの浮気にピュンマの策略あり・・<ウソウソ



E田さま、悪人ピュンマを快く引き取って頂いてありがとうございました。



このお話を献上しましたら「ピュンマさまを讃え敬い平伏す会」のコードナンバー009をゲットしました。 しかもコードネームが天然仔犬!!! E田さま、ありがとうございましたぁぁぁぁ(感涙)

(04年5月19日 E田さま宅にお嫁入り)
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