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お題 6つの同音異義語(しかく) 2.詩客  (お題Comments(0) )

4と7
平ゼロ10話「オーロラ作戦」のサイドストーリー
4と7のかっこいい会話を目指したが、撃沈 orz

尚、その他のお題はこちら、
1 四角 2 詩客 3 資格 4 刺客 5 死角 6 視覚




詩客



<<―――じゃ、これ以上続けると、通信を傍受される恐れもあるから・・・>>
<<了解。無事を祈る>>

「どうやら―――」
004の横で計器をチェックしていた007が口を開いた。
「あちらさんも、あまり はかばかしくないようだねぇ」
「仕方ないだろう。手がかりが『南極』だけだからな。冷静に考えてみれば、『アメリカ大陸のどこかに基地がある』と教えられたようなものだ・・・」
「確かにな、敵が簡単に見つかるわけ、無いか・・・」


 知将ザンブロゾとの戦いで、敵の基地が南極にあるとの情報をつかんだまでは良かったが、肝心の基地は一向に見つからなかった。ドルフィン号で動き回れば、敵のレーダーに引っかかりかねないと、彼らは2つのグループに分かれて捜索を続けている。
 しかし、天候は南極特有の大荒れで、1メートル先の視界さえ覚束ない。まして気温はマイナス50℃、体内の電気系統の出力も明らかに低下しており、長時間の活動はかえって危険を招く。004は軽く舌打ちした。

 小高い丘を登り、手元のレーダーを確認したが、やはり人工的な建造物の気配はなかった。
「そろそろ戻るか」
007へ声をかけると、隣の彼はやおらマフラーを翻し、両手を大きく広げ、2,3歩前へと歩みだした。




おぉ、荒れ狂う風
叩きつける吹雪
かつてここが命溢れる豊かな大地であったことを
誰が信じよう!

ゴンドワナ大陸から切り離され、
極地に置き去りにされた孤独な大陸

微笑むのは唯、氷の女神

ここは、すべてのものを凍らせる

死の大地

氷の砂漠



 一瞬の間を置いてから、007は片手を胸にあて、深々とお辞儀をした。つられて拍手を送る004。
「で、それも、シェイクスピアなのか?」
その言葉に007は一瞬間を置き、まさかと笑った。
「南極大陸が発見されたのは1820年、シェイクスピアの時代より200年も後のことだぜ」
「じゃあ、誰の言葉だ?」
「もちろん」
ここで007は大きく胸を張った。黄色いマフラーがバタバタとなびく。
「グレート・ブリテンだよ」
「誰だ?それ」

 笑ってもらえると思った相手は、至極真面目な顔で自分の顔を見つめていた。007は言いようの無い居心地の悪さを覚えた。

「誰だってって・・・・、そりゃ、ずいぶんとご挨拶だね」
「知らんもんは、知らん。グレートブリテンと言えば、島の名前と相場が決まっているだろう? 第一、そんな詩人、俺の時代にはいなかった」

 「熱でもあるんじゃないか?」そう相手に問い詰めようとしたところで、007は大切なことを思い出した。目の前に居るこの男が自分の本名を知らないという事実を。
 004とはブラックゴーストの基地で知り合って以来、いくつもの戦地を潜り抜けた仲ではあるが、呼称コード以外の名前で呼び合ったことが無い。自分の名を名乗るのも、今が初めてだし、瞳の薄いこの男の本当の名前も知らない。・・・だとすれば、004が不思議そうな顔をするのは当然で、どうかしていたのは自分の方だ。
 ばつの悪さを笑顔で取り繕い、007が弁解をした。

「ふざけていたわけじゃないが・・・・実は・・・グレートブリテンというのは俺の名前だ。ファーストネームがグレート、ファミリーネームがブリテン」
「ほお・・・名前が大英帝国の中心的な島と同じだなんて、ご両親もなかなかしゃれが効いているじゃないか」
「まぁ・・・・な。 グレートブリテンだなんて、まともな親はつけないだろうがな・・・」
「いいじゃないか いいなま―――――」

 耳に叩きつける風が強すぎて、004の言葉を最後まで聞き取ることは出来なかったが、それでも表情から悪いことを言われたのではないということは解った。冷たそうに見えるこの男も、案外、情の深いところがあるのかもしれない。

「それで・・・」
「なんだ?」
「貴殿の名はなんと言うのだ? 俺たち、ずいぶんと長い間一緒に居るが、互いの名前すら知らない」
「忘れた―――40年以上も昔の話だ・・・」
「忘れたって・・・それじゃあ我輩が困るではないか」
「何故だ」
「そりゃあ・・・」
ここでブリテンは皮肉に笑った。
「万が一のとき、墓に彫る名前がわからないんじゃあ、話にならんだろう?」
それとも、コードナンバーを彫ってやろうかと言われ、004もつられて笑った。
「確かにな・・・こんな身体じゃ焼いて海に撒いてもらうわけにもいかないしな」
「環境団体が飛んできて、即刻回収だ」

 遠くのほうでライトが光った。何かが居るらしい。手元のレーダーも弱く反応した。

「どうやら・・」
「お迎えがいらっしゃったようだねぇ」
「行くか?」
「おう」

 ブリテンの言葉に004が歩き始める。つと、2、3歩進んだところで振り返った。

「そうだ、思い出したよ」
「?」
「俺の名は・・・・アルベルト・ハインリヒ。ただし、ふざけてるわけじゃない、これが本名だ」


 走り出したアルベルトの背中を見つめ、グレートは呟いた。



「Heinrich・・・Heinってのは、確か死神って意味じゃないか・・・まったく・・・因果なもんだな」






ザンブロゾを「知将」と呼んだのは、単に私の趣味。鮮やかな攻撃スタイル、指揮官らしい判断、見てくれはおといて・・・・。とにかく、あの1話だけの出演と言うのが実に惜しいゲストキャラでした。


お題 6倍数の御題
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