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ビリオネア 5/8  (お笑いComments(0) )

     






(某番組のナレーション風で)


=正義の味方、ジェット・リンクさんの戦いが始まる!

=親同然の博士、仕事の仲間たち10人と、どうしても伊豆に旅行に行きたい、自称正義の味方のジェット・リンクさん。

   -オートバイのタイヤの本数は何本?
   -B two
   -ファイナルアンサー?
   -Final Answer
   -正解っ!

=本場仕込みのナーイスな発音で正解街道バクシン中。
=悪代官 美濃の出題もバッサバッサとなぎ倒し、久々に1000万円の予感ー!。
=ところが・・・

(ナレーション終り)


「問題 かつてその名を、コンスタンチノープル ビザンチウムと変えた都市の現在の名前は?」

10万円チャレンジは、ジェットが最も苦手とする歴史の問題である。

(これは奴にはわかるまい。さて、どうでるか・・・。)
最初のピンチをアルベルトが興味深げに見つめた。

「A アレクサンドリア B グラナダ C パレルモ D イスタンブール」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ D イスタンブール」
「正解!」

(えっ!・・・?)

華やかな音楽が鳴り響き、ライトが鮮やかにスタジオをを照らす。

「おめでとうございます。10万円獲得です」

にこやかに笑うジェット。
アルベルトは狐につままれたようにセンターシートを見つめた。

(何故、奴があの問題に答えられる? これが秘策の結果なのか?)
ジトリと背中に嫌な汗が流れた。


その後もジェットは、彼にとって難問と思われるような問題を次々と正解していく。
9問目(75万円)も正解し、とうとう100万円の問題になった。

(何かがおかしい・・・)

アルベルトはずっと疑問を感じていた。

問題が出されて、ジェットが答える。その「間」がおかしいのである。
美濃の出す問題に、最初こそ即答をしていたジェットだったが、5問目以降、答えを言うまでの数秒の空白が、妙に不自然に感じられた。

即答ではない。
だが考えて答えを導くにはあまりにも短い時間。
それに、なにより、彼が到底わかるはずも無い問題を、ライフラインも使わずに、自力で正解していることが不思議でならなかった。

(当てずっぽうなのか? それともまた姑息な手を・・・・。)

<<なぁ、イワン。今日の奴はどこか変だとは思わないか?>>
<<・・・>>
<<イワン? 寝たのか?>>
<<ア? アァ、あるべると。ドウカシタ?>>
<<聞いてなかったのか?>>
<<ゴメン、考エ事ヲシテイテ。>>
<<ジェットの様子が変だとは思わないか?>>
<<ソウダネ、人ガ変ワッタミタイダ>>

(人が変わった?) 

もしかして・・・、いや、アイツは今大人の店に居るはずだ。
仲間の中で、奴とすり代われるとすれば、彼しか居ない。
だが、彼は今、電話の前でそれが鳴るのを待っているはずだった。

(まさか・・・な。)



スタジオ内に反響する拍手の渦でアルベルトは我に返った。
とうとう、彼は100万円を手中におさめたらしい。

「応援席のアルベルトさん、どうです?お仲間の活躍は?」
「信じられないですね」
「100万円あれば、伊豆の旅行も豪勢になりますよ」
「でも、彼は何か他に買いたいものがある様子ですし、どれだけ旅行に回してもらえるかが疑問ですね」
美濃は可笑しそうに笑った。

「どこまでがんばって貰いたいとおもってらっしゃいます?」
「当然1000万円ですね。取らなければ家の敷居は跨がせませんよ」

アルベルトの目が刺すように美濃を射る。その殺気に、さすがの美濃も一瞬怯んだ。
この話題を続けるとまずい、彼の司会者としての本能が、話題を別な方へと変えさせた。

「ところで、ジェットさん、そのハッピは手作りですか?」
「手作り」の一言に、ジェットは今朝のフランの甘い囁きを思い出し、鼻の頭が赤くなった。
「あらっ、赤くなっちゃって、もしかしてこれ?」
美濃は小指を一本立てた。ジェットはますます赤くなる。
「い・・いや、彼女って訳じゃないっスけどね・・」
照れ隠しに頭をポリポリ掻く。
「ちょっと、見せてくださいね・・・。確かに手作りって感じでいい具合に絵の具が滲んでますね・・・。正に水墨画。彼女が絵を描いたんですか?」
「いや、絵を描いたのは、店の主人で、」
「じゃあ、彼女は?」
「このハッピを手縫いしてくれました」
赤鼻のトナカイも真っ青になるくらい、鼻を赤らめながら、口を滑らせてしまった。
(なに!(怒))
<<ナニ!(怒)>>
応援席の2人も、彼の発言に心中穏やかではない。
「あら~~。手縫い!!いいねぇ、若いってのは」
意味不明なことを口走りながら、美濃は椅子から降りて、ジェットのハッピを手にとって見る。
「あれっ・・でもこれ、ミシンで縫ってますよ」
「はっ?」
「だって、ほら、ここ・・・これは手縫いじゃないでしょ~」
「だって、フランの奴が」
「あらっ、彼女に騙されちゃいましたか?」

美濃の指摘に、アルベルト、イワンは我に返り、自分のそれの縫い目を見た。
<<イワン・・・お前もフランに手縫いって言われたのか?>>
<<ウン・・・。ドウヤラ、騙サレタミタイダネ、僕タチ全員。>>
手縫いで無いとわかったら、今すぐ脱いでしまいたいような代物だが、ここで脱ぎ捨てたら、「紅一点の可愛い彼女にまんまと騙されました」と自ら宣言していることになり、それは彼らのプライドが許さなかった。
この間抜けな姿をカメラに晒すのはあまりにも恥ずかしかったが、諦めるしかない。

(やられたよ・・・マドモアゼル)

アルベルトは静かに目を閉じた。


一方、センターシートのジェットは、美濃の容赦ない指摘に、すっかり肩を落としていた。
「あらあら、元気を出してくださいね」
「・・・」
「あっ、でも!ほらっ!!」
美濃は必要以上に大げさなリアクションで、ハッピの裾をめくった。
「ここ、ここ。ここは手縫いですよ。まつり縫い」
そう言って、裾の縫い目を見せた。
たしかに不ぞろいなそれは、手縫い以外の何者でもない。
「おお~~~!!やっぱりなぁ~~ありがとう、フラン!!!」
両手で握り拳を作り。ガッツポーズを作った。
おめでとう、ジェット、完全復活だ。


(どこまでもおめでたい奴め。裾は普通、手縫いだ・・・。)


雑談が長引いたせいか、「巻き」の指示が出た。
気づけはセンターシートに座ってから1時間が経過している。しかもその大半は雑談である。
「あんまりジェットさんが面白い方なんで、話が長引いちゃいましたね。じゃあ、問題を続けましょう」

100万円獲得以降の5問は、さすがに難問ぞろいである。
ここまでくると、アルベルトだって、答えがわからないような問題が出てきた。
なのに、ジェットは涼しい顔をして答える。
それも、長々と考えることは全く無く、2,30秒じっと問題を見つめた後、静かに答えを言う。
5問目。最初のピンチかと思われたあの問題以来、全く崩れることの無いリズムである。


<<なぁイワン、アイツ、本当に1000万円を取るんだろうか?>>
<<・・・>>
<<イワン?>>
<<ン? ア? アァ、あるべると。何カ言ッタ?>>
<<お前さん、眠いんじゃないのか?いいぞ、寝てても>>
<<イヤ・・・モウ少シ>>
(もう少し?)

変だ・・・ジェットだけでなく、イワンも変だ。

アルベルトが疑問に思っている間も収録は着々と進み、ついにジェットは500万円の問題も正解したのである。
未だにライフラインは1つも使っていない・・・。

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(03年6月10日 NBG様へ投稿)
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