忍者ブログ         
[PR]  (/ )

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


The Cyborg Solder  (お笑いComments(0) )

一応オールメンバー+ギルモア  ただし、001は居ません。居たらあっという間に問題が解決してしまうので、 眠ってもらっています。都合の悪いときに001を眠らせるのは、平成版のスタンスを踏襲。
第一世代は仕様も部品も古くって、とかく苦労しているようです。
殊に、一番古いわりには立派な機能(加速装置)を搭載したジェットの苦労は 筆舌につくしがたい、というお話。 一応32を狙ったような、違うような・・・・。 フランソワーズがやけに攻撃的なのは、平成版ならではということでお許しください。




The Cyberg Solder (not Soldier)


「だから、そんなこと聞いてんじゃねぇーんだよ、俺は!!」

 声を荒げるジェットに全員の視線が集まった。
 
「・・・今度のメンテナンスでは、電子部品の接合を根本から見直す必要が出てきてのぉ・・・・。それで、そういうわけなんじゃが・・・・、なに、信頼性とか安定性については十分満足できるデータが出ておるから、心配はないでの・・・・。ま、確かに作業温度が高くなることで多少の弊害はあるが・・・・、それとて大きな問題じゃない」
「だから俺はそんな小難しい話じゃなくて ―――― 、博士がさっきから言ってる「ナマリフリーハンダ」ってのは何なんだ?って聞いてるんだよ!!」

 アメリカ人らしくオーバーな身振り手振りで自分の疑問を口にするジェットリンク。相対するは、人の話を聞いているようで、実は全く聞いていないギルモア。端から見れば2人の議論が全くかみ合ってないことなど一目瞭然だが、当人達がそのことに気付く様子はない。
  しかし、リビングの面々は『鉛フリーはんだ』の言葉に合点がいったらしく、互いに頷き合うと、ニヤニヤしながら議論の行方を眺め始めた。

「―― だから、はんだってのは?」
「つまりは合金での。金属の融点を下げるために配合した微妙な比率の合金なんじゃよ」
「フリーってのは、彼女が居ませんのフリーと同じ意味か?」
「無いということを客観的に正確に証明することは困難な話じゃかからのぉ」
「はっきりしねぇなぁ。だから居るのか居ないのか、どっちなんだよ?」」
「まぁ一般的な設備を使えば数十ppbレベルでの検出は可能になってきておるでの、ま、それよりは少ない、という意味じゃよ」
「(溜息)・・・・で、鉛がどうしたんだよ!」
「ま、目的は有害な物質を排除することからはじまるんじゃが、歴史を紐解けばどこから話せばいいものやらのぉ」


 延々とかみ合わない話を聞かされたメンバーは、互いに目配せする。この2人には冷静な仲裁役が必要だ。でなければこの不毛な議論を一晩中聞かされることになりかねない。
 
「あのね、ジェット」

 メンバーを代表して議論に割って入ったのはフランソワーズ。間違ってもここでアルベルトを投入してはいけない。「皮肉と悪態」の小雨が、知らぬ間に「マイクロミサイル対ジェット噴射」の嵐にもなりかねない

「わりぃ、俺、今、博士と話してるから」
 ジェットが迷惑そうにヒラヒラと手を振る。
「ね、アタシも混ぜて。『鉛フリーはんだ』の話なんでしょ」 


「すみませーーん、博士。ちょっとこっちの機械を見てもらいたいんですがぁ」



 メンテナンスルームから声をかけたのはピュンマ。タイミングが良すぎるのは、無論、計算済みのこと。
 百戦錬磨の彼らにとって、「博士とジェットを引き離す」 という目的達成ために、各々が最も効率良い行動を取ることなどさほど難しい話でもない。

「おお、そうか。わかったわかった。今、行くでのぉ」

 「あとはヨロシク」 とギルモアはフランソワーズを見やり、「ヨイショ」と掛け声をかけて立ち上がる。さすがに歳も歳だけに、少々辛そうだ。
 「まったく、この年寄りを隠居させてくれないのだから、君達も・・・」 などと愚痴めいた独り言を呟きながらも目元は嬉しそうに微笑んでおり、まだまだ頼りにされるのが嬉しくて仕方が無いようだ。

「おい、後の説明ってか、俺の質問はどーなってるんだよ!」

 だが、ギルモアはジェットの抗議に振り返ることなく去っていった。最近、少し耳が遠いらしい。  ( おまけに、遠くなったことをいいことに、聞こえないフリをすることも多くなった。)

「チェッ」

 今度のメンテナンスは大掛かりで、電子部品を接合しているはんだ成分を変更する、って辺りから、ジェットには理解不能なものになっていた。 それが「鉛」だの「フリー」だの・・・、果ては細かなデータの話まで一気にされたものだから、脳みそを浮かべている髄液が一気に沸騰した。 沸騰じゃこと足らず、蒸発したかもしれない(いや、サイボーグに髄液はあるのかどうかは知りませんけど・・・・)



「ずいぶんと食い下がってたじゃない、アナタにしては珍しいわね」

 ニコリと微笑んだフランソワーズ。 彼女の笑顔にジェットが見惚れた瞬間を狙って、そっと紅茶を置いたのはブリテン。  で、キッチンの奥で、「ボクが置きに行くぅ」と騒いでいるジョーを抑えていたのが張大人とジェロニモで・・・・(ご苦労様ですおふた方(涙))

「まあな」
「いつもだったら説明なんて全然聞こうとしないのに」
「そのつもりだったんだけどよ、部品を接合してる・・・はんだ?・・・の成分を全面的に変えるって言ったら結構大掛かりな話だろう? だからさ、たまにはゆっくり話を聞いてやろうと思ったんだけどよ、それが・・・」
「ちょっとわかりにくかった?」

 優しいお姉さんを装った(<装う?)フランソワーズのペースに嵌ってしまったジェットは、すっかりおとなしく、かつ、素直になっていた。 これも紅茶の香りとアルベルトが奏でるピアノの効果なのかもしれない。

「あぁ、ちょっとどころか全然わからなくってよ」
「博士に聞いてみたものの、的を得た答えは返ってこなかった・・・のね?」
「全くその通りさ」

 議論から振り落とされた彼は、どこか投げやりな様子でソファーにもたれかかり、大きく伸びをする。拗ねた彼は思いの他かわいらしいとフランソワーズから笑みがこぼれた。

「だったら、アタシが教えてあげるわよ」
「ホントカ!」
「まかせて、こう見えても専門は電子工学ですから」(本当に見かけによらないんですが)
「でも、卒業してねーんだろ?」
「それは余計なお世話です」

 ムッとしたフランソワーズが口を尖らせ、ジェットの鼻を力いっぱいつまむ・・・否、捻り上げる。
 突然の、しかも予期せぬ痛みにジェットが思わず叫び声を上げた。
 「イタイ、イタイ」と喚きながらも、彼は先程の失言を詫び、嘆願の言葉を延々と言い続ける。そのあまりにも滑稽な姿にどっと笑いが起こり、ようやくリビングにいつもの和やかな空気が戻ってきた。  (・・・・ですが、この時点でもキッチンの奥では、「ボクも混ざるぅ」と暴れるジョーをジェロニモと張々湖が押さえつけてるわけで・・・(本当にお疲れ様です))
 「もうその辺で止めてやれ」 とアルベルトが止めなかったらどうなっていたかはわからないが、解放されたジェットの鼻はまるで天狗のようであった。





「あのね、博士が言ってらした、『鉛フリーはんだ』のことなんだけど、まずは『はんだ』の話しからしたほうがいいのよね?」
「ハ・・ハイ」

 何事も無かったように、はんだの説明に入ったフランソワーズに赤鼻のジェットが応じた。

「アタシ達の身体は、アナタも知ってるとは思うけど、電子制御されているのよ。つまり数え切れないくらいたくさんの電子部品が組み込まれているの」
「さすがにそのくらいは・・・知ってるつもりだけどよぉ」
「ここで問題なのが、電子部品を回路につなぐ方法。 電気がきちんと流れるように、熱や衝撃にも十分耐えられるように、強固にくっつけないといけないの」
「俺達の場合は特に頑丈につけないとな」
「そう。そしてその役目を果たすのが 『はんだ』 なのよ」
「なるほどねぇ・・・回路に部品をくっつける糊の役目、ってところか?」

 フランソワーズは生徒の素直な反応に満足そうな笑顔を返し、説明を続けた。

「糊、とてもいい例えね。 糊としての効果を上げるために、はんだは 「スズ(Sn  原子番号50 融点 231.84℃)」 を主成分としているの。 回路を構成する銅や鉄と合金を作りやすいからなんだけど・・・ま、相性がいいってくらいに思っておけば良いわ」
「スズねぇ・・・・」

 馴染み無い元素の名前に、発したジェットの言葉もどこか頼りなげだが、フランソワーズはかまわず続けた。

「はんだの主成分はスズで、そのスズを熱で溶かして接合させるのだけど・・・・・、実はね、スズだけでは問題があるの」
「問題?」
「そう。問題ってのはスズの融ける温度 ――つまりは融点なんだけど―― が高すぎることにあるの。 工業的に使うにはコストがかかるし、作業温度も高くなるし・・・。それに性能面でも問題があってね、成分がスズだけだと強度も弱くて」
「急に話が難しくなってきたけど、要は、スズが融ける温度が高いってのがいけねーんだな」
「まあね」
「で? 鉛の話はどうなったんだ?」
「そう、ここで鉛の話が出てくるの。つまり、さっきの問題を解決するために、鉛(Pb 原子番号82 融点327.4℃) も混ぜているの」
「なんで融点が高いものを混ぜるんだよ、余計融けづらくなるじゃねーか」
「そう思うでしょ? でもね、スズを6割 鉛を4割の配合で合金を作ると、183℃で融けるようになるのよ」
「なんでそうなるんだ?」
「聞かないで!」

 誰もが思う当然の疑問を口にしたジェットは、フランソワーズの一際厳しい目に睨まれて、口をつぐんだ。リビングに異様な緊張が走る。

「―――――― アタシの専門は電子工学、化学じゃないのよ」
「あ、あぁ、あぁぁ、そ、そーだよな」

 鬼のような形相に睨まれて、息することすら忘れていたジェットが引きつった笑いを浮かべて応じた。さっきのように鼻を捻り上げられたら、今度こそひとたまりも無い。

「で、でも・・・鉛を混ぜて使いやすくなったんだったら、それで問題ないんだろう?」
「そうでもないの」

 紅茶を一口飲んで、ふぅ、と溜息をついた彼女は、ゆっくりと視線を外へと移した。今日は一段と青空の色が濃い。

「鉛って、毒性があるの。 急激に体内に取り込むと中毒になるし、慢性的に摂取してもね、問題があるの。 普通に生活している分には鉛を摂取することは無いから、つい、大丈夫って思いがちなんだけど・・・・。実はそこに落とし穴があるの。」
「落とし穴・・・」
「例えば、要らなくなった家電の不法投棄・・・野ざらしにされた家電に雨が降るでしょ、 この雨・・・酸性雨で、はんだの中の鉛が溶け出してしまうの。不法投棄だけじゃないわ。ルールに従って回収されても、 業者がきちんと処理をしなければ同じこと。鉛は同じように溶け出してしまうでしょうね。
 そして一度はんだの中から溶け出してしまえば、あとは簡単。鉛は地中へ染み込み、地下水に流れ込み、飲料水に含まれ、魚や家畜、野菜に蓄積されて・・・・ね」
「ゆくゆくは人間の身体を蝕んで・・・か。それで、鉛を含まないはんだなんだな」
「そう、それが鉛フリーはんだなのよ」
「でもさ、鉛をなくしたらいろいろ問題があるんだろう?」
「企業努力と博士の研究で、私達にも適したはんだが開発できたんだけど、やっぱり作業温度は今より高くなるし、強度もね、いろいろ改善の余地はあって」
「そんなモン、俺達に使って大丈夫なのかよ? おい、ジョー、お前のはんだはどうなってるんだ?」
「はんだ? ボクの身体には使ってないよ!!」

 やっと話に混ぜてもらえたと、尻尾を振って(<?) リビングに駆け込んできたジョーが、嬉しそうに話す。

「使ってない?」
「うん、第二世代は昔みたいな方法で回路を作ってないから!」
「そうなのよ・・・アタシたちを開発した頃と違って、いろいろ技術も進歩してるし」

 フランソワーズが補足する。

「じゃあ、フランやおっさんはどうなんだよ?」
「アタシ? アタシは電子制御の部分が少ないし、ちょうどいい機会だからって博士が第二世代仕様にあわせてくれたの。フフ、すごく快適よ」
「俺も、だ」
「アン? 2人ともそうしてもらえたなら、俺だってそうしてくれよ」
「無理だ。お前は電子制御の部分が多すぎるらしい。ジェットエンジンの出力には細かな制御が必要だし、旧仕様で使い物にならない加速装置だって電子制御の塊だからな」
「ちぇ・・・・置いてきぼりを食った気分だな・・・・ってか、俺1人だからって博士、研究に手ぇぬいてないだろうな」









「そ、そんなことは無いわ。博士も大丈夫っておっしゃってたし、きっとね・・・・・大丈夫よ・・・・・・きっと・・・・・・多分」






















――――― そして、2ヵ月後・・・





 ドーーーーン


 凄まじい爆音に地響きがする。
 

「全員集まったか?」
「コチラはOKアル」
「アタシ達も」
「002・・・・・002は?」
「居るんだけど・・・また」

 困り顔の009が、足元に横たわる002へ視線を落とす。
 そこには白目を向いて動かなくなった002の姿。だが、負傷して重症、あるいは瀕死の状態、というのはなく・・・、明らかに「電源が落ちてしまった」状態。
 004はまたかという表情をし、明らかに面倒くさそう応じる。

「なんだ、またはんだが取れたのか?」
「そうみたいなんだよ。鉛フリーはんだもまだまだだね」
「008、もう一度はんだづけしてやってくれ」
「わかった。009、さっき渡したはんだごて、ちょうだい」
「え・・・あれ必要だったの? てっきり要らないと思って、敵の本拠地においてきた」
「ハイ? ・・・・・・でも・・・それじゃ、直せないし」
「なら、ワテの炎の出番アルネ。6000℃ヨ? はんだくらいチョイチョイのチョイで溶かすあるね」
「ダメダメ、電子回路に火炎放射をしたら、他の部品が全部融けちゃう」
「じゃあ、ドルフィン号までこいつを運ぶのか」
「無理だわ。陸も空も敵の手が回っているもの、全員が全力疾走で逃げ切れるかどうか・・・・」
「002が空から攻撃を仕掛けて逃げる算段だったわけだし」
「オイッ008、どんな手を使ってもいいから奴を治せ!」
「直せるものなら直すさ!!はんだごてがあればいつだって直して見せるさ」
「009、敵のアジトにもどって取って来い!」
「えぇーーーー1人で行くのイヤダなぁ・・・・そうだ! 007ならはんだごてに変身できるでしょ?」

 思いもかけない009のグッドアイディアに全員の表情が明るく変わった・・・が、

「いや、我輩が変装の達人だとしても、熱いのは苦手だからして・・・」

 頼みの綱、007の変身も期待できず、昨日眠ってしまった001はもっと頼りにならず・・・
 なすすべも無く、動かない002を前に、男衆が深い溜息をついた。



「もう、じれったい!」

 しばし沈黙の後、イライラした口調で003が叫ぶと、やおら002の上に馬乗りになり、目もくらむような激しい往復ビンタを食らわせはじめた。  もちろん、ビンタは何度も何度も執拗なほどに繰り返され、 辺りにはパッシーーン、パッシーンと小気味良い音が何度も何度も響く。  説明なんか不要だろうが、平成版の彼女が手加減するはずなどなく、女性といえどもサイボーグ、可愛い可愛い紅一点の張り手に002の頬はみるみる赤く腫れあがっていった。

「ね、フランソワーズが怖い」

 怖気づいたジョーが005の背後に回り、

「いい加減、止めるんだ」

 004が003の肩をつかんだ瞬間、



「てめーーー、痛ぇじゃねーか、なにしやがるんだ?」



 ガラの悪い言葉は紛れも無く2番目の仲間・・・


「「「「直った!!!!!」」」」


 仲間達の絶望が狂喜に変わった。


「でも・・・003、なんで、002は直ったの?」


 009の問いかけに、003はひときわ輝いた笑顔を見せた。












「あら、だって、電化製品が壊れたら、叩いて直すのが基本でしょ?」





あとがき

まず、タイトルの解説を・・・

Solderとは和訳すると「はんだ」。
Soldierと一字違いだなんて、運命的なものを感じますよね、ね?<無いです



実はこの話、オチはりーみんさまから頂戴しました。 (ネタを快く譲ってくださってありがとうございます(平伏)>りーみんさま
最近は、ネタ不足の感もあり、ありがたいことでございます。

いえ、使えるネタなら、ピュンマをオヤジに仕立て上げてしまうほどの悪徳管理人、 人様のネタだって強引に強奪してしまったわけですが、相変わらず説明くさい文章ですみません。

はんだを勉強中のひとには(居ないとは思いますが)役立つ内容かもしれません。<有り得ません

鉛フリー化は、環境のためにも、人体のためにも間違った選択ではないはずですが、 ジェットのような憂き目にあう、気の毒なケースも僅かながら出てくるんでしょうか・・・・(不安)


アナタ(の購入したジェット)がそんな不幸に遭いませんように、心よりお祈りしています。


それから、ジェットを叩いて直すのはやめましょう。 とても危険です。
ジェットの調子が悪かったら、すぐお近くの電気屋さんへ!!

(05年7月31日 初出)
PR

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<大試練(from juiさま) | HOME | 今、ここにある危機 part2>>
忍者ブログ[PR]