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脱走・その後  (シリアスComments(0) )

00ナンバー脱走後のBGでの話
ガイア博士とスカール閣下が登場します。




この話を始める前に、改めてブラックゴーストという組織についての簡単な説明をしよう。

「死の商人」と呼ばれるこの組織は、兵器を開発し、兵器そのもの或いは技術を、国家や武器製造会社に売ることで莫大な利益を得ている。彼らが取り扱う物は小型の銃から戦闘機、潜水艦・・・、武器、兵器と名がつくものは全て手がけているといっても過言ではない。そして、この組織の利益の大部分は、現在戦場で使用されている戦闘機やミサイルなどによるものである。

一方、近未来の戦争に対する研究開発にも力を注いでおり、「未来戦プロジェクト」と呼ばれている。未来戦プロジェクトとは、宇宙空間や深海など、生身の人間が活動できない場所での戦争を想定し、それに対応した兵器開発を目的としたもので、現在3つの開発グループ ―― サイボーグ開発グループ エスパー開発グループ ロボット開発グループ ―― がある。
このプロジェクトにはブラックゴースト内でも選りすぐりの優秀な研究者が集められ、日々最先端の技術開発が行われている。また、個々の研究者にとっては、自分の成果に応じてブラックゴースト内での地位が決まることもあり、グループ間の開発競争は熾烈を極めていた。

そんな折、ギルモア率いるサイボーグ開発グループが長年の課題であった拒絶反応の問題を解決し、第2期開発計画をスタートさせた。今までの難航ぶりは嘘のように改造は着々と成果を上げ、ついに計画されていた9番目の試験体も完成させせるに至った。試験体が揃ったことで量産の青写真も出来あがり、具体的なビジネス展開の議論も始まった。この結果、サイボーググループは他のグループに対してに大きく水をあけたことになった。

だが・・・・・


肝心の試験体が反乱を起こし、ギルモアを人質にとって脱走してしまったのである。








脱走、その後








「およびでございますか、スカール様」
薄暗い部屋の中、震える声でガイアは言った。

ここはサイボーグ開発部隊が拠点としている研究所、その中の通称、「粛清部屋」と呼ばれる部屋である。3次元投影されたスカールの前にガイアはおそるおそる進み出た。

カチッ

無数の銃口が一斉に彼の方を向く。
例えようも無い威圧感と緊張感。
足が震え、立っているのが精一杯だ。
額から、背中から、身体中から冷や汗が滲み出る。

「ガイア君、今回は見事なショーを見せてもらったよ。いや、実に楽しかった。」

低いテノールの声が部屋中に響き渡る。

「も・・・申し訳ございません」

ガイアは跪き、両手を床につけた。

「大変な失態をしでかしまして・・・」

頭を床に擦りつけ、ひたすら土下座をした。
命乞いのつもりか、或いは恐怖で立っていることができないためか、彼はスカールの前でただひれ伏すだけだった。




― 粛清部屋 ― この部屋の噂は彼も聞いていた。

成果を出さない研究者に対しては情け容赦の無い厳罰がある。
かつてこの部屋へ呼ばれた者で、無事に出てきた者のは誰一人居ないとさえ言う。
だから、試験体サイボーグに脱走されてからというもの、どんな厳罰が下されるのか、そして誰がこの部屋へ呼ばれるか、サイボーグ開発に携わった研究者全員が戦々恐々としていた。
ガイア自身は、ギルモアが人質として連れ去られた今、No2の座にあった自分がが最もこの部屋へ近い人間であり、今回の失態の責任を取るために、死をも覚悟していた。しかし、実際にこの部屋へ入ると、その覚悟は脆く崩れ去り、泣き喚き、命乞いをしてしまいそうな衝動に駆られる。


「飼い犬に、手を噛まれたというわけか」


スカールの言葉は冷ややかな嘲笑がこもっていた。
その声がガイアの全身を突き刺す。

「ギルモアが人質に取られなければ・・・それが唯一の誤算でした。」
「なるほど・・・・・。お前はギルモアが人質に取られた、本気でそう思っているのか?」

一瞬の間があり、スカールは全く感情のこもらない声で、
「どこまでもお気楽だな。」と続けた。

「・・・」

「ブラックファントムの存在をプロトタイプどもが知るわけが無い。あれが奴らに乗っ取られたことを考えれば、今回の茶番劇は全てギルモアが仕組んだこととすぐにわかるであろう。お前はそんな簡単なことにも気付かなかったのか?」

嘲るようにスカールは言い放った。

「!!!」

迂闊だった。状況を丁寧に整理して考えれば、すぐに導き出せた解答だった。
ギルモアが自分達を裏切り、試験体とともに脱走をした ―― そう考えれば、目覚めたばかりの009がいとも簡単に反乱軍に合流できたこと、厳戒態勢だったコントロールルームに007が入ってきたこと、その他にも思い当たったさまざまな疑問の説明がつく。

ガイアは唇を噛む。何一つ言い返すことなど出来ない。
全ては自分の迂闊さ、失策が招いたことだったのだ。

「申し訳ございません・・・・。ですが、どうか命だけは・・・」

もはや彼に残されたのは命乞いをすることだけだった。
床にへばりつくように土下座をし続けるガイア、顔から吹き出た汗は否応なく目に入り、それが染みてか涙が止め処もなく流れ落ちる。 

彼の身体全体が恐怖で震えていた。


「まぁ、そう緊張することも無かろう。顔を上げるがいい、ガイア博士。私は君達サイボーググループの成果に非常に満足ししているのだよ。その証拠に今日は今後のことを相談したくて、君をここに呼んだに過ぎないのだ。」
「なんですと!」

両手は床に付いたまま、ガイアは頭を上げ、スカールを見上げた。
しかし、依然として部屋中の銃口は彼一点に集中しており、薄氷の上を歩くような思いからは解放されない。
スカールはそんな彼の動揺を小さく笑い、楽しそうに言葉を続けた。

「脱走、実に結構なことではないか。」

「どういう・・・・意味でしょう?」

ガイアは尋ねた。

ブラックゴーストの科学力を結集して作り上げた試験体すべてに逃げられたというのにこの余裕、彼はスカールの意思を図りかねた。

「解らないか? 私は常々君達が『テスト』と呼んでいる、お遊びのような戦闘ごっこに飽き飽きしていたのだよ。」
「といいますと?」
「君達は奴らを『大切な試験体』呼ばわりして、本気で奴らを壊滅させることなど考えたことなど無かったろう?」
「・・・・・」
「燃料は中途半端にしか入れない、攻撃を仕掛けても本気で殺そうとしない、そんなテストで本当のサイボーグの性能が測れるというのか?」

スカールの鋭い指摘にガイアは悔しそうに俯いた。

「あの程度のテストならばロボットとて立派に成果を上げるであろう。」

ロボットとサイボーグを一緒にされたことでガイアのプライドに傷がついた。
相手がスカールであることも忘れ、怒気がこもった口調で反論に出た。


「サイボーグとロボットは全く別物です! 人間の脳を素材にしたサイボーグの優秀さは――」
「くだらん説明は時間の無駄だ!!」 スカールの恫喝がガイアの反論を一蹴した。
「も、申し訳ありません」ガイアは我に返り、再び床に頭を擦りつける。
「サイボーグの性能がロボットとは比較にもならない、そう言いたいのだろう?」
「ハイ、おっしゃるとおりで」
「では、君の言う、サイボーグの優秀さを私に見せてはもらえないだろうか。」

サイボーグの優秀さを証明するといっても、すでに持ち駒は無く、実戦さながらのテストをしたくても出来ない。
答えに窮して黙り込むガイアにスカールは言葉を続けた。

「お前もつくづく頭の固い男と見える。逃げたプロトタイプを窮地に追い詰めて、奴らがどのような戦いをするか私に見せてはもらいたいのだよ。」
「つまり、彼らに刺客を送り込めと」
「やっとわかったか・・・。
どうせ君達のことだ、あの騒動の中で、009のデータなど全く取ってはいないのだろう。ならばもう1体試作型を製作することを許可する。性能は009と同等だ。」
「が、しかし、009と同性能の試作型1体では裏切りサイボーグを壊滅させることはいくらなんでも・・・」
「無理だろうな。だがな、私は裏切りサイボーグの真の性能が見たいのだよ。今度開発するサイボーグ0010は捨て駒になっても一向に構わない。それよりも実戦で命がけの戦闘テストが出来る、非常に面白いではないか。」


沈黙が流れた。


「どうだ?やるか?」
ガイアの目がある決意をしたのを見計らったかのようにスカールは答えを促した。

「では、私に考えがあります。009と同性能の試作型2体作る許可を頂きたいのです。」
「ほう?」
「身体を高圧帯電させたサイボーグを作りたいのです。1体はプラスに、もう1体はマイナスに帯電させ、敵を2体の間に挟んだ状態で放電を起こすのです。」
「なるほど。奴らに電撃で致命傷を与えようというわけか。」
「はい。009と同レベルの加速装置を搭載すれば、2体で9体の相手も十分に可能かと。あわよくばプロトタイプの1体もしくは2体は始末できるでしょう。」
「解った、開発を許可する。早速準備にかかれ」
「ありがとうございます。」

立ち上がり、深々と礼をし、踵を返そうとしたガイアをスカールは呼び止めた。

「それから、お前は0010の開発が終了したら、すぐに量産型の製作に取り掛かれ。低コストで高性能。これが条件だ。いつまでも道楽のような研究ばかりさせておくわけにもいかないからな。」

「・・・・・」

「そろそろ、サイボーグ開発部隊の諸君もブラックゴーストに貢献していただきたいのですよ、ガイア博士。」

スカールは慇懃な口調で言った。

「わかりました・・・。ですが、裏切りサイボーグ達の方はどうなさるおつもりですか?」
「ロボット開発部隊がな、面白いアイディアを持ってきたから、奴らにやらせることにした。」
「ロボット部隊ですか」

少し余裕が出てきたのか、ガイアは冷ややかな笑いを浮かべた。

ブラックゴースト内部では各開発部隊間の競争は激しい。成果を上げた部隊への報酬は信じられない額である一方、成果を上げない部隊へは粛清が待っていた。次世代兵器としてロボット開発グループ、サイボーグ開発グループ、エスパー開発グループがしのぎを削って開発競争に取り組んできた。が、試作体を9体完成させ、テスト結果も良好なサイボーグ部隊の成果が他のプロジェクトを圧倒していた。
特にロボットは戦闘パターンにバラエティーが無く将来性に乏しい、というのが大方の研究者の意見だった。
ブラックゴースト内でもロボット開発グループに対する見方は冷ややかで、近々粛清されるとの噂も公然と流れ始めていた。


「奴らのアイディアはなかなか面白くてな・・・」

スカールは珍しく饒舌に計画を語った。

最初の1体は大型ロボットを製作し、それを人間の脳で駆動させるというものであった。それはサイボーグに他ならないが、機械部が人間の形を取らず、大型クモ型ロボットになるという。ロボット部隊が開発した瞬間移動装置や広範囲に毒液を散布する機能を備えたロボットを人間の脳でコントロールする。

「失礼ながら、それは出来損ないのサイボーグとしか思えませんが」ガイアは笑いをこらえながら言った。
「まぁ、まて。まだ先がある。 今回の計画にはガモ・ウイスキー博士が参画するんだよ。」

ガモの名前を聞いて、ガイアの顔色が変わった。

001の開発者として成功を収めたガモだったが、しかし、その後の研究成果ははかばかしくなかった。わが子を手放してまで研究予算を確保したものの、それでもまだ決定的な成果があげられずに居た。しかし、エスパー研究の第一人者であることに変わりはなく、彼が成果を全くあげていない状態でもまだ研究が続けられるのは他ならぬ001成功の功績以外の何者でもない。
そのガモがロボット部隊に加わる・・・。

「2体目の試作品は、死んだ人間の残留思念を利用して家自体を兵器に代えるそうだ。
 さらに、3体目は巨大ロボットをエスパーが遠隔操作する新しい形のロボットを完成させるのだと語っていたよ。何でもステルス処理をすることで我々の目には見えないロボットになるそうだ。どちらもガモ博士による試験体への脳改造、これが決め手になるだろう。」

「・・・・」

1体目2体目はともかくも、3体めの発想にはガイアも舌を巻いた。
もし、この計画が成功すれば、即、実戦に応用できる兵器になりえるのは確実で、解体目前とまで噂されたロボット開発グループが組織内での力を一気に盛り返すことになるだろう。

「どうだ、面白いだろう。たった一人の人間とロボットで広範囲の破壊が可能な兵器が生まれるのだよ。サイボーグは製作コストも掛かるが、ロボットだったら安く作ることができる。今回の計画が成功を収めれば、戦闘用ロボットの商品価値ガ高くなるだろうな・・・。ご機嫌取りが面倒なサイボーグ様なんかよりもな。」

スカールはロボットプロジェクトの計画を口にすることで、ガイアを挑発した。

試験体が成功したからといって、組織内での将来が確約されたわけではないのである。
明日は一気に形勢が逆転しているかもしれない。崖っぷちに立たされた思いでガイアの身体は再び硬直した。

「・・・・・」

「0010と量産型サイボーグの成果が楽しみだよ、ガイア君。
そうだ、マスプロタイプが完成したら、内戦状態のムアンバへ送り込みたまえ。あの内戦はあと4,5年は続くだろう・・・というか続けさせるつもりだからな。其処で出来るだけ派手なデモンストレーションをするといい。そうすれば、プロトタイプども ―もっともその時までに何体が残っているかは解らんがな ― 奴らは現れるに違いない、いや、おびき出すんだ。そうすれば、また見事なショーになることだろう。プロトタイプ、マスプロタイプどちらも我々ブラックゴーストが開発した製品だ。ショーは対外的にも大いに宣伝にもなるだろう。」

スカールは高らかに笑った。
ガイアはスカールの隙のない冷酷な考え方に背筋が寒くなった。

「まずは0010の改造とその成果だな・・・楽しみだよ。2体もお遊び用に作らせてやるのだからな、私を満足させられないような結果だったら、その時は―」

スカールの目が光った。

「は、はい。この命に代えてでも・・・閣下のお気に召す結果をご覧に入れて差し上げます」

「ほほう。楽しみだな。では期待しているぞ ――・・・・・

そう言うとスカールの姿はだんだんに薄くなり、やがて消えていった。
暗かった部屋に電気が灯り、いつの間にか無数の銃口も消えていた。
ガイアはその場にへたり込み、しばらく放心していたのであった。


それから数週間後、「捨て駒」と呼ばれたことも知らずに0010プラス・マイナスはプロトタイプ抹殺の命を受けて日本へと向かったのであった・・・。






あとがき

「営利団体ブラックゴーストはサイボーグビジネス(<絶対に赤字)をどのようなビジョンで考えているのか」■■■

書き始めのきっかけは多分そんな感じだったと思います。

平成版BGは長年の研究成果である大事な試験体を失った割に、刺客が手ぬるくって、それがが気になってました。
0010~0013まではともかくとしても、(あっ、刺客は0010、11だけですね。平成版の場合)。イギリスでのハチ(?)攻撃、フランスでのストーカーまがいのいたずら攻撃は、

「どうしたんだ、もっとがんばれ、ブラックゴースト!」

とテレビをわしづかみにしてしまいました。

ムアンバ編は大変に見ごたえがあったんですが、幹部フレゲーは指揮官としていかがなものかと。

ひょっとして閣下は00ナンバーを殲滅させる気が全くないんじゃないか?

16話で閣下はそれを「簡単なこと」と仰ってますし。
それを元に書き始めたら、なんでしょうね、この話。(ノ_-;)ハア…



(03年3月23日 NBG様に投稿)
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