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一般環境下における粘性流体の挙動と制御(遥音1ヶ月 祈3ヶ月)  (遠雷(ささげモノ)Comments(0) )

周 2、8 遥音 祈(ミルク飲んでいるだけ)
育児では避けて通れないお話(多分)
8が被害者になるのはお約束。8スキーの方は読む前にご一考ください。



ギルモア邸 ―――

 

 

薄青色のカーテン越しに日差しが明るく輝き、開け放たれた窓からは波の音と湿気を帯びない風が心地よく流れ込んでくる。
ついさっきまで昼ごはんで賑わっていたリビングもしんとして、壁の時計も控えめに規則正しい音を刻む。
 フランソワーズが外出するからと子守りを頼まれた周は、彼女とジョーの愛娘 祈(3ヶ月)にミルクを与えながら
窓から見える海を眩しそうに眺めた。

 

「ねぇ・・8番目・・・」

「何?」

彼女の正面で 「一般環境下における粘性流体の挙動と制御」 
という難解なタイトルの専門書を読んでいる8番目・・・否、ピュンマが顔を上げる。

「嬉しそうだったわよね」

「ん?・・・・あぁ、フランソワーズのこと? 
そりゃあ、祈を産んでから初めてのバレエのレッスンだからね。
昨日の夜からそわそわしていて・・・そりゃあ大騒ぎだったんだ」

「久しぶりのレッスンで倒れてなきゃいいけれど」

「大丈夫さ。ジョーがついているし」

「それもそうね」

「アッ、アーー」

 


ベビーベッドには1ヶ月になったばかりの遥音がご機嫌で、
最近出始めた喃語(なんご)を駆使して天井相手に会話の練習。

「遥音もずいぶんしゃべるようになったね。・・・でも何をしゃべってるんだろう」

ピュンマは後ろを振り返り遥音の方を見やった。

「さあね・・・。家でも何処でも、声上げてばかり。案外、宇宙と交信してるのかもよ」

クスリと周が笑う。彼女の微かな動きを感じてか、腕の中の祈が乳首から口を離して
不思議そうに彼女を見上げた。

 

 


風に乗って微かに聞こえる蝉の声。

腕の中の子供のあたたかさに周のまぶたが徐々に重くなっていく・・・・と、その時、

 

 

 

 

 

 
ドンッ!!!!!




 

 

 

 

心地よい眠気は、突然の無遠慮な音に破られた。

祈も一瞬ミルクを飲むのを止めて、音の方へ不安そうに顔を向ける。
一方、遥音はこの事態に全く動じることはなく、寧ろ一層手足を激しくばたつかせ、
「キャィ」と嬉しそうな叫び声を上げた。

「心配しなくていいのよ」周が祈の頭を軽くなで、視線を扉に移すと、

「ちょっと、バカ陽気! 少しは静かに出来ないの?」

だが・・・・名指しされたジェットは自慢の鼻を2,3度ひくつかせ、

「なんで、こんな時間にメシ炊いてんだ?」不思議そうにあたりを見回した。

「・・・? うん、確かににおうね、ご飯の匂い・・・」ピュンマも匂いの素を目で探す。

「あら、そう?」

周がベッドの我が子に視線を泳がせた瞬間、殺気にも似た気配にジェットの表情が急変する。

「あっ、あっ、わかった、じゃ、俺はこれで・・・」

両手で「待った」のポーズをとりながら2、3歩後ずさると、後ろ手にドアを開け、
逃げるように部屋を出ていってしまった。
 

風が一瞬強く吹き、木の葉の擦れ合うささやかな音がした。
 

「なんだったんだろうね・・・ジェット・・・」

ピュンマは首をかしげたが、気を取り直して本へと視線を戻した。一方周は口の端だけで笑う。

「バカ陽気にしては、ずいぶんと察しがよろしいこと」

そしてピュンマへ顔を向けた。

 

 

「8番目―――

 

 

 

 

         遥音のおむつ、変えてやって」













一般環境下における粘性流体の挙動と制御

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ?」

当然の疑問である。

「話の流れが見えないよ」とピュンマは周に返す。

「まだまだ修行が足りないわよ、8番目」

だから、その8番目ってのは勘弁してよ・・・と言いかけたが、周が彼の苦情を聞いているはずはなく、

「おむつは・・・そこのバックの中。 おしり拭きも同じ所に入っているから。それから、今つけてるおむつは袋に包んで――」

実に慣れた様子でおむつ替えの手順を指示しはじめた。澱みなく流れる説明からすると、過去に何人もの被害者が出たのだろう。

 

「あのさ、周」遠慮気味に、でも絶対に引かない表情のピュンマ。

「なぁに?」

「話を整理したいんだけど」

「どうぞ」

周は祈を見つめたままで返事をする。

「ご飯を炊く臭いがしたら、どうしておむつ替えなんだい?」

「わからない?」 周が顔を上げると、

「あぁ、皆目見当がつかないよ」ピュンマは明らかに困惑気味だった。

「あのね、赤ちゃんのウ○チってのは、ご飯を炊く臭いがするものなのよ」

「・・・・・ウソ?」

「うそだと思ったら、遥音のおむつを開いてみればいいのよ」

 

言葉が出ない。っていうか、ジェット、いつの間にそんなこと覚えたんだ?

 

「ジェットはさすがに5回もやらされているからね、いい加減に覚えたらしいし」

周がカラカラ笑うと祈の哺乳瓶の動きが三度止まった。

「私はさ、祈にミルクを上げてるでしょ。ほかに誰も居ないし」

「まぁ・・・そうだけど・・・」

「遥音は男の子だからイワンと一緒、平気でしょ?」

「・・・・・」

「祈のを替えてといってるわけじゃないのよ」周は丁寧に付け加えた。

 

ピュンマは黙考する。

 

   確かに男の子のおむつ替えはイワンで実戦済みだから、難しいことではない。

   女の子の場合は手順がややっこしいとも聞くから、出来ることならやりたくは無い。

   (実際恥ずかしいし)

   加えて、バカ親 ジョーはフラン、周、クロウディア以外の仲間が祈のおむつを
交換することを極端に嫌う。以前、ジェロニモが祈のおむつ替えをしていたら
加速装置で一撃を食らったと、ぼやいていた。今度、祈のおむつを替えたら間違いなく
彼にに殺されるに違いないとも言っていたっけ・・・。

 

 

   その点、遥音の両親は子供に執着しないから、心配無用なんだろうけど・・・。

 

 

 

   けど・・・・

 

 

 

   人に子守りを押し付けないで、自分でも何とかしてください!!>お父さん
 












「でも、僕、首の座らない赤ん坊の世話なんてしたことないし」

ピュンマは一応しり込みをしてみせたが、

「平気平気。後学のためよ」予想通りの答えが返ってきた。

 

後学って・・・予定は全然ないんですが・・。ピュンマが大げさに溜息をつく。
だが、これ以上歯向かう材料も残されておらず、しぶしぶ周のマザーズバックを開け、
必要な道具を全て取り出すとベッドに大きめのバスタオルを敷いた。
その上にそっと遥音を寝かせると、当の赤ん坊は視界が変わってうれしいのか
手足を激しくばたつかせ始める。

 

「コラコラ・・・漏れるぞ」

 

ピュンマは顔をしかめた。祈、遥音、を見ているから、乳児のウ○チがやわらかいことくらい、
先刻承知。さらには、おむつから漏れ出たときの処置の大変なことといったら涙ものであることも重々わかっている。
大きく息を吐き出したピュンマに周が追い討ちをかける。

 

「溜息つかない!今は昔よりは遥かに楽になったんだからね」

 

「確かに・・・アナタの最初の子育て時代は、紙オムツがこの世に登場するなんて
夢にも思わなかったでしょうからね。当時は洗濯機だってなかったでしょう」

周には聞こえないほどの小さな声で、呟く。が、

「失礼ね、洗濯機くらいはあったわよ!!」

抗議の声が部屋に響く。聞こえていたらしい。恐るべし地獄耳。
さらに周は追い討ちをかける。

「大体8番目の国だって洗濯機はあやしいんじゃないの?」

それこそ失礼です。停電は多いですがテレビだって洗濯機だってちゃんとあります。

 

 

自分に構ってもらえるものだから、遥音はますますご機嫌になり、全身をばねのように伸縮させる。
それがおむつ外しを一層困難にした。

悪戦苦闘の末、やっとオムツを外すと、目の前でウ○チは今にも溢れ出さんばかりになっていた。

 

(ヤバイ)

 

ピュンマの脈拍が急速に速まる。

ここで、周囲のものにうっかりつけてしまおうものなら、ウ○チ野郎とジェットに罵られるに違いない。
おむつ替えは先手必勝、躊躇いは許されない。

おしりふきを取り、遥音のお尻を手際よく拭き始める。

 

「いいねぇ、8番目、筋がいい」

 

誉められて嬉しくない人間は居ないというが、こればっかりは複雑だ。
あきらかにおだてられているようにも思えて。

 

と、その時、遥音のしゃべりが急に止まった。

 

見れば、目は一点を見つめ、小さな手はきつく握り締められている。

顔も心なしか紅潮しているようで・・・

 

「どうした、遥音?」

 

ピュンマが覗き込もうとした瞬間、遥音のお尻から勢い良くそれが飛び出してきた。

 

 

 

 

 

                      ピッチャッ!

 

 

 

 

 

軽くて、ささやかな音がピュンマの胸元に響く。

 

「「あっ・・・・・」」

 

白い胸元に広がる茶色のそれ・・・

 

「どうだぁ?おむつ替えおわったかぁ?」

 

 

 

ジェットがドアを乱暴に開ける。視線の先には呆然と立ち尽くすピュンマ。

遥音は涼しくなったお尻にご機嫌で、「あっ、あーーー!」と奇声を発していた。

 

 

 

 

 


「ぶっふぁふぁふぁ!!!ウ○チ野郎だぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 












「今日は博士のところに行ったのか?」

「あら、やけに情報が速いのね」

「いや・・・」アルベルトが育児日記を指差す。

「ピュンマがおむつ替えをしたって書いてあるから」

「8番目にはいい修行になったわよ」

「巨大なお世話だな、それは」

 

 アルベルトがノートのページをめくったとき、ヒラリと一枚の紙切れが床に落ちた。

 

「ん?」

床へ手を伸ばして拾う。

 

 

紙切れを見たアルベルトの眉がつりあがった。
そこには隙間なく敷き詰められた、アルファベット、ギリシア文字、演算式の羅列。
それは暗号のようでもあるし、宇宙からのメッセージのようにも思えた。
書いてあることを少しでも理解しようと、アルベルトは読める文字を声に出してみる。

 

「物体AからBまでの距離r・・・粘性係数μ・・・・圧力頭p・・・・・噴出速度u・・・なんだ、これは?」

「あぁ、それね・・・」

 

周が顔を上げた。

 

「遥音がウ○チをしてから、50cm離れたおむつ替えの人に届くまでの時間を計算した結果」

「そんなもん誰が計算したんだ?」

「8番目に決まってるじゃない」

他にそんな計算が出来るのはギルモアとイワンくらいなものだわと周は付け足した。

「確かに・・・だが、なぜそんなことを」

「遥音のウ○チから逃げるためらしいわ」

「逃げる・・・?」

「彼もかけられたのよ、遥音に」

「そうか、それは・・・・・気の毒だったな」

 

妙に同情的なところをみると、アナタも被害者ですか?アルベルト。

 

「で、結果は?」

「0.03秒」

「有効な解決策は?」

「さぁ・・」と周は首を捻る。

「加速装置が必要だって呪文のように唱えていたわ」

「加速装置・・・」

アルベルトはこめかみに指を押し当てると、唸るように言う。

「ウ○チをしてからスイッチを入れたんでは、加速に入る前にウ○チがかかるんじゃないか?」

「そうね、人間の反射速度の限界は0.1秒とも0.2秒とも言われているし」

「第一、そんなものを計算しなくても赤ん坊の顔を見てればわかるだろうに・・・」

「まあね、確かに」

「奴もまだまだ詰めが甘いな」

メモを見ながらアルベルトは口元を僅かに歪ませた。

 

 







育児話第3弾。またしても実話に基づくお話です(号泣)。

何度引っ掛けられたことか・・・数え切れません



ピュンマには気の毒と思いつつ、ラストのあのオチでは彼以外の人は
考えられないため、2作連続コメディーで被害者に起用。
本当にごめんなさい。>8スキーのみなさま そしてピュンマ様



ただ・・・ただ1つだけ言い訳させてください。育児では・・・





こんなこと序の口なんだよぉぉぉぉ!!!





がんばれピュンマ。きっとこの経験が活用できる日が来るに違いない。







・・・というか、誰か彼を幸せにしてあげてください。







(03年12月7日juiさま宅へお嫁入り)

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